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韓国徴用工判決、国際社会の常識と懸け離れる


 韓国の大法院(最高裁)は、戦時中に強制動員されたという朝鮮半島出身者の元徴用工4人が日本企業を相手取って起こした賠償請求訴訟の差し戻し上告審で、ソウル高裁が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に対し計4億ウォン(約4000万円)を支払うよう命じた2013年の判決を認めた。戦後補償の個人請求権は1965年の日韓請求権協定などで消滅したとする日本の立場を真っ向から否定するものだ。韓国に対する信頼が失われかねない。

 急に再開された審理

 韓国元徴用工が原告の日本企業に対する賠償請求訴訟で確定判決が出るのはこれが初めて。個人請求権が請求権協定で消滅したか否かの判断が最大の焦点で、大法院は5年間判断を留保してきたが、文在寅政権になってにわかに動き始めた。

 そもそも韓国政府は、問題は協定で解決済みとの見解を示してきた。盧武鉉政権時には元徴用工には協定が適用され、補償や救済は韓国政府が行うという結論を出したこともある。文大統領自身の個人請求権に対する解釈も揺れ動いていたが、朴槿恵政権時に韓国外交省が日韓関係への悪影響を懸念して故意に審理を遅らせたとする報道などをきっかけに、検察が同省庁舎を家宅捜索し、その後大法院は審理を再開させた。

 なぜ急に再開されたのか。政敵だった朴前大統領への報復の一環だとすれば、日韓関係を犠牲にしてまで国内の政治基盤固めを優先しようとしたものであり、極めて遺憾だ。

 判決を受け、安倍晋三首相は「国際法に照らしてあり得ない判断」と述べた。河野太郎外相は李洙勲駐日大使を呼び直接抗議した。当然だろう。

 敗訴確定で日本政府は韓国側が請求権協定に違反したとして第三国を含む仲裁委員会設置や国際司法裁判所への提訴など法的対抗措置を取る構えだ。事態がエスカレートすれば北朝鮮問題をめぐる日韓連携にも深刻な亀裂が生じかねない。

 文政権はいわゆる従軍慰安婦問題をめぐる2015年末の日韓合意に基づいて設立された「和解・癒やし財団」の解散を示唆しており、歴史認識問題での「反日」姿勢が鮮明になってきた。国家間の約束事を自国の事情を理由に一方的に反故(ほご)にするやり方は理解に苦しむ。国際社会の常識とも懸け離れている。

 文大統領は今年、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と3度の首脳会談を行い、史上初の米朝首脳会談の橋渡し役も果たすなど、北朝鮮の融和路線転換に手を貸してきた。だが、肝心の北非核化の行方は見通せないままだ。景気対策では失政が指摘され、支持率も下降気味だ。

 仮に支持挽回へ「反日」カードを切り、それが政権や世論の意向に左右されやすいとされる韓国司法の判断に影響を与えたとすれば問題だ。

 同様の判決続く恐れも

 今後も日本企業を相手取った同様の裁判で同じような判決が続く恐れが出てきた。両国関係を維持・発展させていこうという動きが無視されているような気がしてならない。文政権には日本との関係改善にもっと心を砕いてほしい。