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韓国慰安婦財団、解散なら未来志向の後退だ


 韓国の文在寅大統領はニューヨークで安倍晋三首相と首脳会談を行い、2015年末のいわゆる従軍慰安婦問題をめぐる日韓両政府間合意に基づき韓国が設立した「和解・癒やし財団」の解散を示唆した。合意は同問題の「最終的、不可逆的な解決」を確認したもので未来志向の精神に沿ったものだった。韓国が財団解散に踏み切れば日韓関係は再び悪化せざるを得ない。

「枯死」招いたのは文氏

 文氏は会談で財団について「正常な機能を果たすことができず、枯死せざるを得ない状況にあり、解体を要求する声が強い」と述べた。財団はすでに理事たちが辞表を提出し、事実上の活動停止に追い込まれているが、「枯死」に追い込んだのは文氏自身にほかならない。

 文氏は昨年の大統領選挙の公約にこの合意の破棄を掲げていた。当選後、政府内に合意検証の作業部会を設け、被害者の元慰安婦との疎通を欠いていたなどとする問題点がまとめられたことを受け新方針を発表した。元慰安婦への癒やし金支給などに充てた日本拠出の10億円を韓国政府の予算で肩代わりすることにし、今年7月にそれに相当する103億ウォンが新たな政府基金としてプールされた。

 一連の動きには、合意が朴槿恵前政権の「積弊」の一つで清算されるべきだという強い意志が反映されたのではないか。文氏の極めて高い支持率は、こうした前政権叩(たた)きが功を奏した面もある。

 一方で文氏は、日韓合意の破棄や再交渉は求めないとも明らかにしたが、その主張には無理があろう。財団解散はそれが依拠する日韓合意を破棄するも同然だからだ。

 文氏が国連総会の一般討論演説で「わが国は日本軍慰安婦の被害を直接経験した」と述べたことも物議を醸しそうだ。合意では国連など国際社会においてこの問題で互いに非難・批判することを控えることが盛り込まれている。合意の形骸化を狙ったとしか思えない。

 文氏は今年初めから北朝鮮が仕掛けてきた南北融和の演出に乗って、米朝首脳会談の橋渡しに奔走し、金正恩朝鮮労働党委員長とは会談を3回行った。

 こうした流れを維持するには日本の協力も必要だったはずだ。市民団体が徴用工像の在釜山日本総領事館前への設置を強行しようとした際、これを警察が阻止するなど一時は日本配慮の姿勢が見られたのはそのためだとの見方がある。

 しかし、今回の財団解散の示唆や慰安婦被害に言及した国連演説は明らかに反日色を鮮明にさせたものだ。文政権には市民団体出身者も少なくない。国内で慰安婦問題をめぐる日本批判を繰り返す一部市民団体から圧力を受け、日韓関係悪化を覚悟で反日に舵(かじ)を切ったとすれば極めて遺憾だ。

核問題での連携に目を

 来月は小渕恵三首相と金大中大統領による日韓パートナーシップ宣言から20周年を記念する行事が予定されている。だが、このままでは日韓の信頼関係を構築することが難しくなる恐れがある。文氏には北朝鮮核問題をめぐる連携の重要性にも目を向けてもらわなければ困る。