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国連制裁委報告、看過できぬ北の違法「瀬取り」


 国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会・専門家パネルがまとめた中間報告書は、北朝鮮が今年、洋上で積み荷を移し替える「瀬取り」により石油製品や石炭の密輸を大幅に増やし、その手口も巧妙化していると指摘した。非核化への具体的な行動が求められる中、裏で制裁逃れを繰り返す不遜な態度であり、到底看過できない。

範囲や規模が拡大

 報告書は北朝鮮による石油製品の瀬取りに約40隻の船舶と130社の企業が関わっているとし、範囲や規模を拡大させている実態が浮き彫りになった。瀬取りに使う船を小型化したり、位置を把握されないため船舶機器の電源を切ったりするなど手口が巧妙化しているという。

 北の違法な瀬取りに対しては米国をはじめ関係国による航空機の警戒監視活動が強化されているが、それでも瀬取りが拡大しているのが実情だ。発覚した以外にも監視網を縫うように行われている可能性がある。

 北朝鮮は4月の南北首脳会談や6月の米朝首脳会談を通じて演出された融和ムードで国際社会の監視の目が緩めば、さらに瀬取りを行えると考えているのではないか。北朝鮮はこれまでも騙(だま)し討ちのようにして国際社会を裏切り続けてきたことを忘れてはなるまい。

 防衛省もこれまで北朝鮮船籍のタンカーなどが東シナ海で石油などを瀬取りしている疑いがある現場を確認している。横付けされた船籍不明の船の中には中国国旗とみられる旗を掲揚していたものもあった。

 中国は以前から北朝鮮への制裁に消極的で、特に米朝首脳会談後はロシアと共に制裁緩和を主張している。瀬取りに手を貸していたとすれば大問題だ。

 韓国も北朝鮮の瀬取りに関与しようとした疑いが浮上した。東シナ海で5月、韓国船籍のタンカーが北朝鮮船籍のタンカーに接近した現場の写真を海上自衛隊が撮影し、日本政府が韓国に事実関係の確認を求めた。

 北朝鮮に対する「最大限の圧力」で日米両国との連携を確認してきたはずの韓国が、南北融和を理由に北朝鮮の制裁逃れに加担するようなことは断じてあってはならない。

 報告書によれば、北朝鮮は安保理決議で全面禁輸の対象となった品目の一つである繊維製品を昨年10月から今年3月にかけて中国、インド、メキシコ、タイなどに輸出した。それらによって得られた1億ドル(約111億円)以上の収入は核・ミサイル開発の資金源になったと指摘している。

 報告書は、北朝鮮がシリアに弾道ミサイル技術を供与した可能性にも言及。これらの実態を基に「北朝鮮は核・ミサイル開発をやめていない」と結論付けた。米朝会談後も北朝鮮が非核化に応じる兆しは見られず、制裁を緩和させる理由は全く見当たらない。

制裁維持が不可欠だ

 今のところ米国は北朝鮮が非核化に向け動き出さない限り制裁を維持するとしているが、トランプ大統領が北朝鮮の融和攻勢に惑わされ、制裁緩和に転じないとは言い切れない。日本としては制裁が不可欠であることを主張し続ける必要がある。