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韓国慰安婦予算、日韓合意の精神を損ねる


 韓国政府はいわゆる従軍慰安婦問題をめぐる2015年末の日韓合意に基づき日本政府が韓国に拠出した10億円について、これを全額肩代わりするため103億ウォンを予備費として予算に計上することを閣議決定した。事実上、合意を見直す文在寅政権の新方針に沿った措置だが、未来志向の協力を目指した合意の精神を損ねるもので、日韓関係への悪影響が懸念される。

 10億円全額肩代わり

 日本が拠出した10億円は合意に基づき韓国で設立された「和解・癒やし財団」に預けられ、これを財源にすでに多くの元慰安婦や遺族らに癒やし金が届けられてきた。

 癒やし金を渡す際には日韓合意の趣旨を説明し、同意を得ていたという。この事業は元慰安婦らと意思疎通を図った上で行ったもので、日韓両国はこれをもって「最終的、不可逆的な解決」とするはずだった。

 ところが、文政権は今年1月の新方針で10億円を韓国政府が肩代わりすることにしてしまった。この時点で癒やし金の意義は色褪(あ)せ始めたが、今回の閣議決定で完全に合意の精神は損ねられたと言わざるを得ない。

 充当分の予備費は韓国女性家族省が運営している「両性(男女)平等基金」に納入され、具体的な使途は日本政府などとの協議を通じて決めるというが、一貫して韓国に合意履行を求めてきた日本政府としては到底応じられまい。

 今回の予算をめぐり鄭鉉栢女性家族相は「今後も被害者中心の解決に基づき最善を尽くす」と明らかにした。文政権は被害者本位の政策が実現するならば2国間合意を無視しても構わないと考えているのだろうか。

 日本に配慮する動きがなかったわけではない。韓国の労働団体が在釜山日本総領事館前で徴用工像設置を強行しようとしたが、警察が実力で阻止した。

 ただ、文政権は北朝鮮と南北首脳会談を2度行い、史上初となった先月の米朝首脳会談では仲介役を買って出るなど北朝鮮情勢への対応に追われていた。対日政策の優先順位は高くなく、何より日本を刺激して一連の会談に影響を及ぼしたくなかっただけではないのか。

 北朝鮮は金正恩朝鮮労働党委員長が直接関わる首脳外交をひと段落させ、米朝の非核化交渉は長期化の様相を呈し始めている。歴史認識問題で再び思い切った対日政策を打ち出すのは今だと判断した可能性がある。

 来月、日本統治からの解放を記念する「光復節」の前後に、韓国では政府や民間団体が「反日」行事を予定している。特に政府は今年から8月14日を「慰安婦の日」と称し元慰安婦をたたえる法定記念日とする。

 また韓国の南北交流団体が訪朝し、統治時代に徴用された朝鮮半島出身者の遺骨を日本から持ち帰る共同事業を進めることで合意した。南北が融和ムードに乗じ、「反日」で共闘する兆しがあることも心配だ。

 北の脅威を直視せよ

 北朝鮮の武力脅威は依然としてある。日韓は米国を含め結束しこれに対抗する必要があり、過去の問題に執着する余裕はないはずだ。融和路線になびく韓国に直視してほしい現実だ。