金正恩の“平和”に騙されるな


韓国紙セゲイルボ

韓国内の混乱、安保瓦解狙う

 昨日まで核実験をし、血縁を殺していた独裁者金正恩(朝鮮労働党委員長)が平和の微笑を浮かべている。人々は冷戦のカーテンが開いたと歓呼し、金正恩の人気が南側で沸騰する珍現象まで起こっている。

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5月26日午後、板門店で握手する北朝鮮の金与正党第1副部長(中央)と韓国の文在寅大統領(左)(韓国大統領府提供・時事)

 しかし、金正恩が言う平和が真実なのか偽りなのか明らかにすることが重要だ。明らかな点は他人に物を与えようとするなら、まず自分の手中にそれがなければならないという事実だ。金正恩は果たして“平和”を持っているのか。

 人間は誰でも自由を保障され生命と人権が侵されないことを望む。こうした普遍的価値と不可分のものが平和だ。残念なことに北朝鮮にはそのような平和はない。北朝鮮では人民班長の許可なしでは旅行できず、親戚の家であっても気安く寝ることさえできない。一言間違っただけでも首が飛ぶのが常だ。一人の平和のために万人の平和を踏みにじる所が北朝鮮社会だ。南北対話以後もその実状は一つも変わっていない。

 北朝鮮が偽装工作を担当する宣伝扇動組織を党の中心に置く理由だ。その組織の最高実力者がまさに金正恩の妹・金与正(宣伝扇動部第1副部長)だ。北は平和の微笑を浮かべながら、オリーブの枝で核を隠している。米軍遺骨送還と平和協定推進もこうした偽装戦術の一環だ。

 反論もあるだろう。相手を悪魔と規定してどうして対話になるのかと。その通りだ。対話が目的ならばそうだが、国家の運命と国民の生命が目的ならば、アクセス方法は変わらなければならない。核戦争の危険を避けて平和の結実を得るためには何より真実に立たなければならない。

 ヒトラーの偽装平和に騙(だま)された英国、レ・ドゥク・ト(ベトナム労働党政治局員)の微笑に騙された南ベトナムの運命がそうであった。地獄へ行く道はいつも善意で包装されている。毒キノコは派手な装いを持つ。

 平和には“悪魔の平和”と“天使の平和”がある。悪魔は戦争の同意語として平和をしばしば使う。同じ言語でも誰が使うかによりこのように意味が変わる。従って悪魔の毒キノコを安易にもらってはならない。悪魔の言語に騙されないためには、暗号を解くような精巧な解読能力が必要だ。韓国国民に絶対的に必要な安保の徳目だ。

 悪魔が狙うのは韓国内部の混乱だ。最悪の混乱は善悪が逆転する時に起きる。天使を装う悪魔が歓待を受け、真実を叫ぶ天使がかえって排斥にあえば、社会の混乱は極に達するだろう。北の偽り平和攻勢で国内が対立し、安保思想まで瓦解する。核爆弾が炸裂(さくれつ)する前に、独裁者が投げた“言葉の爆弾”で安保の壁が崩れ落ちている。嘆かわしい。

(裵然國論説室長、7月21日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。