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米朝将官級会談、非核化が後回しにされないか


 米国と北朝鮮は朝鮮戦争(1950~53年)で捕虜となったり行方不明になったりした後、死亡した米兵の遺骨返還に関する将官級会談を南北軍事境界線上にある板門店で開いた。双方による将官級会談は9年ぶりで、遺骨返還は先月の米朝首脳会談で合意したものだ。

 だが、肝心の北朝鮮非核化については一向に進展する兆しが見えない。米朝首脳会談後の双方の言動を見る限り、北朝鮮が非核化に真摯(しんし)に向き合おうとしているとは思えない。

遺骨返還が先行か

 米朝首脳会談では共同声明として合意した4項目の最後に遺骨返還が盛り込まれた。会談の最大の焦点は北朝鮮の非核化だったため、唐突な感じは否めなかった。

 11月の中間選挙や2年後の再選を見据えるトランプ米大統領が目に見える会談成果としてこだわったのではないかとの見方が出た。北朝鮮としては米国に貸しを作る形となり、遺骨返還に応じた見返りを求めてくることも予想される。

 当初、遺骨返還をめぐっては実務協議の開催が予定されていたが、北朝鮮の代表団が欠席したため延期された。その後、北朝鮮が協議を将官級に格上げするよう提案してきた。

 格上げ要求は遺骨返還問題だけでなく、朝鮮戦争の終戦宣言やその後の休戦協定の平和協定転換など突っ込んだ話をする狙いがあったからではないかという見方が出ている。実際、北朝鮮メディアは将官級会談の当日、「終戦宣言の早期発表が朝鮮半島の緊張緩和と米朝の信頼醸成のための先決要素」と主張し、米国に圧力を掛けた。

 もちろん遺骨返還で米朝の信頼醸成が進む可能性はある。米朝対話そのものを継続させることにも意味はあろう。ただ、北朝鮮の思惑が何なのか常に注意する必要がある。

 将官級会談の翌日に行われた実務者協議では遺骨返還の日程や手順について詰めの話し合いが行われたとみられている。すでに米国は遺骨を納める箱を軍事境界線の南側に運び込んでいるとも言われる。

 一部では休戦協定締結日である今月27日に、まず身元特定済みの遺骨の返還がなされるとの見方が浮上している。仮にそうなれば、北朝鮮にはこの日に遺骨返還を行うことで終戦宣言問題を国際社会にアピールする狙いがあるとみるべきだろう。

 遺骨返還や終戦宣言などが先行すれば、北朝鮮の非核化が後回しにされることが危惧される。外交・安保専門の米オンライン誌は北朝鮮が2003年から平壌近郊のウラン濃縮施設を密かに稼働させていると報じ、米政府も事実関係を確認したという。北朝鮮は同施設の存在について今後の非核化交渉で説明しなければならない。

北ペースに注意喚起を

 南北・米朝首脳会談で融和ムードが広がっているが、日本としては北朝鮮による武力脅威が依然としてなくなっていない以上、拉致・核・ミサイル問題の包括的解決というこれまでの方針を貫くべきだ。

 北朝鮮ペースに巻き込まれないよう米韓両国に注意を喚起する必要がある。