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米朝協議、交渉の引き延ばし図る北


「非核化」具体策に踏み込めず

 6月12日の米朝首脳会談を受けた米朝協議をめぐって、北朝鮮が交渉の引き延ばしを図る姿勢が顕著になってきた。朝鮮戦争で死亡した米兵の遺骨返還のため、12日に南北軍事境界線のある板門店で予定されていた協議に北朝鮮側代表団は姿を現さなかった。15日に協議は開催されたが、今後、非核化協議が北朝鮮ペースで進むことが懸念される。

ポンぺオ氏(左)と金英哲氏

7日、平壌で2日目の協議に入るポンぺオ米国務長官(左)と北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長(AFP時事)

 米兵の遺骨返還をめぐる協議は、今月6、7日に訪朝したポンぺオ米国務長官と金英哲朝鮮労働党副委員長との会談で、12日に開催することで合意していた。しかし、当日、北朝鮮側は姿を現さず、代わりに15日の開催を提案した。北朝鮮は、非核化に比べハードルが低い米兵の遺骨返還でさえ、容易には進展させない姿勢を見せている。

 ポンぺオ氏の訪朝自体も、当初は米朝会談の翌週にも行われると見られていたが、3週間が過ぎた今月6、7日にようやく実現。協議の後、ポンぺオ氏は、今回の訪朝で一定の進展があったとの認識を示したが、北朝鮮外務省報道官は談話で、核関連施設の申告や検証を求めたポンぺオ氏に対して、「一方的で強盗のような要求」だと牽制(けんせい)した。

 「完全な非核化」については、米朝会談で合意したにも関わらず、今回、期限や工程表など具体策に踏み込めていない。北朝鮮は、非核化への取り組みはできるだけ遅らせて、その間、米側から譲歩を引き出すことを狙っているとみられる。

 ポンぺオ氏の過去2回の訪朝では、いずれも金正恩朝鮮労働党委員長と面会しているが、今回は、実現しなかった。その一方、北朝鮮は、トランプ氏との関係は重視し、交渉決裂を避けたいとの意図がうかがえる。外務省報道官談話では、「われわれはトランプ大統領に対する信頼をまだ保っている」とし、トランプ氏が12日に公表した正恩氏からの親書では、「(トランプ氏の)精力的で並外れた努力に深く感謝する」と持ち上げた。しかし、親書は非核化については言及していない。

 こうした状況に、トランプ政権は緩みつつある北朝鮮への制裁圧力を引き締め直す動きも示している。12日には、米国連代表部は、北朝鮮が船舶間の洋上積み替え「瀬取り」で石油精製品を密輸入し、安保理制裁によって定めた年間輸入上限量を超えたとして、石油精製品の北朝鮮への輸出を即時停止するよう求める文書を安保理制裁委に送っていたことが分かった。

 ただ、トランプ氏は、今のところ米朝会談によって醸成された友好ムードを壊したくないという思いが強そうだ。トランプ氏は正恩氏からの親書をツイッターで公開し、「とても素晴らしい手紙だ」として、協議が順調に進んでいることを強調。また、11月の中間選挙に向けた遊説では、米朝会談について「大成功だった」として支持者に外交成果としてアピールしている。今後、交渉の行き詰まりを打開するためにトランプ氏が強硬な姿勢に転じることも考えられるが、今のところその兆候は見られない。

 一方で、こうした協議の遅れが「非核化協議に疑念を投げ掛けている」(米紙ワシントン・ポスト)などと懐疑的な見方が広がりつつある。こうした状況が続けば、米国内でトランプ政権に対する批判が高まることもあり得る。

(ワシントン山崎洋介)