世界日報 Web版

米朝会談、識者はこう見る 過去の文書より大幅後退 古川勝久氏


国連北朝鮮制裁委員会元専門家パネル委員 古川勝久氏

 公開された合意文を見る限り、過去の米朝間の合意文と比較しても、内容が大幅に後退しており、明らかな準備不足としか言いようがない。ただ、信頼醸成という面では前進だろう。

古川勝久氏

 今後継続し、実務レベルの詰めをポンペオ国務長官が引き継ぐ構図ができていて、その一連の流れが合意されているのであれば、今回の会談は米朝関係の仕切り直しということでは良いことだろう。

 北朝鮮との交渉で一番重要なのは、最終的な文言。具体的な文章で何が書かれているかが一番重要だ。今回、文書に書かれているのは、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化にコミットしているということ。自国だけの非核化にコミットしているわけではない。

 北朝鮮の体制保証についても文書では言っていない。文書ではアメリカと北朝鮮は新しい二国間関係を確立することにコミットすると。「新しい二国間関係」が何を意味するのかは分からない。何を言っているのか分からない内容にとどまっている。そういう意味で後退だ。

 北朝鮮がミサイル関係の施設や核実験場を自発的に破壊していること自体は前向きな話。ただ、いわゆる「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」ではない。こういう細かいところを詰めていかないと、あとで面倒な問題になる。

 彼らが仮に真摯(しんし)に非核化のためにやっていたとしても、検証という観点からすれば、検証がより難しくなる、手続きが面倒になるようなことが今実際に起きている。そういう細かいことを早急に詰めて、米朝の合意した手続きに基づいて北朝鮮がアクションを取る、そういうプロセスを一刻も早く始めなければならない。実際にそういうプロセスがすぐに始まるのであればそれは素晴らしいこと。ただ、この文章ではそこはまだ読み取れない。

 加えて、トランプ氏が非核化というのが何を意味し理解していない可能性があるという懸念がある。私が言う非核化というのは三つの根本が入っていなければいけない。一つは、現存の核弾頭とか兵器級核物質、さらには関連施設、あるいは機械の破壊、廃棄、無害化だ。トランプ氏はおそらくここしか見ていないように思うが、さらに重要なのが、二つ目、将来も北朝鮮が大量破壊兵器計画を再開させないこと、三つ目、他国に拡散しないことだ。そういうことをしっかりと踏まえた上で、トランプ氏が非核化と制裁解除について言及しているとはとても思えない。