南北首脳会談、うやむやにした非核化意志


 韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は南北軍事境界線にある板門店の韓国側施設「平和の家」で第3回南北首脳会談を行い、「完全な非核化を通じた核のない朝鮮半島」を共通目標にし、年内に終戦宣言を目指すことなどを盛り込んだ「板門店宣言」に署名した。だが非核化の具体的方法や時期には触れず、その意味でうやむやな結果と言わざるを得ない。

皮相的な融和に逆戻り

 北朝鮮はこれまで自国の核開発は米国の敵対視政策が原因で、あくまでも自衛手段だと繰り返し主張してきた。核問題をめぐる話し合いの相手は米国であるというのが基本的な立場だ。北朝鮮の核開発はすでに国際問題化して久しく、韓国一国では手に負えないのも事実だ。

 その北朝鮮が今回の首脳会談で非核化を議題にしたのは後に控える米朝首脳会談でトランプ大統領を説得する必要があったからだろう。韓国が北朝鮮の非核化意志を評価・支持してくれれば米国が強硬姿勢に出てきた場合、一種の安全装置となる。

 北朝鮮の非核化に対する本気度が疑われるのは宣言文で非核化の項目が最後の方にやっと出てくることにも表れている。もちろん日本をはじめ国際社会が求める「完全かつ検証可能で不可逆的」という非核化のレベルには一切言及されていない。

 南北首脳が会談するのは約10年半ぶりだが、両首脳は異口同音に2000年と07年の共同宣言の精神に回帰すると述べた。皮相的な融和に酔いしれ、一方的に北朝鮮への経済援助に傾いていった時代に逆戻りするのか。韓国保守政権下で起きた北朝鮮による幾多の武力挑発もお咎(とが)めなしとなる可能性がある。

 年内に終戦宣言を目指し、そのために韓国、北朝鮮、米国の3者あるいは中国を加えた4者による協議を開始するとの合意は、非核化を条件的に宣言した見返りに北朝鮮が米国から引き出したいものとみられている。休戦協定が平和協定に転換されれば米軍は韓国から撤退しなければならない。その後に待っているのは今なお半島赤化をもくろむ北朝鮮の韓国侵攻だと、専門家は警鐘を鳴らしている。

 韓国では今回の首脳会談に対する歓迎ムードが広がっている。饒舌(じょうぜつ)でしばしば笑顔をこぼし、冗談交じりに文大統領と対話する金委員長のイメージまでアップしているようだが、信頼醸成と対立を繰り返した南北の苦い歴史に思いをはせるべきだろう。変わるのはいつも韓国の方であり、北朝鮮は本音では敵対路線を一切変えていない。

 南北は今回、文大統領が今年秋に訪朝し、再び金委員長と首脳会談を行うことで合意した。国際社会の制裁を緩和させ、あわよくば体制保証まで取り付けたい北朝鮮の戦略に韓国が手を貸し続けることになりはしまいか心配だ。

米朝会談がヤマ場に

 6月初めまでに開催される見通しの米朝首脳会談では今回、南北が合意した程度の非核化水準では通用しないとの見方が多い。金委員長がどのような説得材料を持ち出すのか、トランプ氏がそれをどう判断するのか。北朝鮮核問題の大きなヤマ場になりそうだ。