五輪後に再び危機モードに 北朝鮮情勢で米専門家


大気圏内核実験の可能性も

 ブッシュ(子)元米政権で国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたマイケル・グリーン戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長は23日、北朝鮮が平昌冬季五輪に参加することで対話ムードが広がっているが、核問題の解決につながる「ターニングポイントになる可能性は低い」とし、「春か夏には再び厳しい状況に戻るだろう」との見通しを示した。ワシントンの同研究所で報道陣に語った。

マイケル・グリーン氏(左)とスー・ミ・テリー氏

米戦略国際問題研究所のマイケル・グリーン日本部長(左)とスー・ミ・テリー韓国部長(早川俊行撮影)

 平昌五輪を機に対北融和路線が加速する危険性について、グリーン氏はそれに歯止めをかける「幾つかの重要なガードレール」があり、その可能性は低いと分析。中国とロシアは、北朝鮮が核・ミサイル開発を凍結する代わりに米国と韓国も共同軍事演習を凍結することを提案しているが、北朝鮮が国連安保理決議に違反する行為を凍結する見返りに、米韓が抑止に必要な軍事演習を中止するのは「不釣り合い」であり、「米政権は演習の再開を主張するだろう」と語った。

 また国連安保理決議による制裁が厳しく、韓国が北朝鮮に経済援助を行える余地が少ないほか、韓国の世論も北朝鮮を完全には信用していないと指摘した。

 一方、スー・ミ・テリーCSIS韓国部長は、北朝鮮が平昌五輪への参加を決めた狙いについて、「国際舞台でのイメージチェンジを図る」とともに、「米韓間に亀裂をつくり出そうとしている」と分析。これに対し、韓国の文在寅政権は五輪後も対話を拡大させるため、「米韓合同軍事演習の延期を主張するかもしれない」と懸念を示した。

 米韓が五輪後に予定通り軍事演習を再開した場合、北朝鮮がどう反応するかが大きな焦点だが、テリー氏は「昨年のような危機モードに戻ると思う」と予想。短・中距離ミサイルや大陸間弾道ミサイルの発射のほか、大気圏内核実験を行う可能性もあり得るとの見方を示した。

(ワシントン早川俊行)