「情報戦」で正恩氏に圧力を、対北朝鮮で米専門家


 米有力シンクタンク、ランド研究所のブルース・ベネット上級国防アナリストはこのほど、世界日報のインタビューに応じ、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し、経済制裁に加え、「情報戦」で金正恩朝鮮労働党委員長に圧力をかけるべきだと主張した。正恩氏は自身の「偶像化」を進めているが、それを否定するような情報を北朝鮮国内に流すことで、住民の動揺を誘うことができるとの見方を示した。

ブルース・ベネット氏

インタビューに応えるブルース・ベネット米ランド研究所上級国防アナ リ ス ト(山崎洋介撮影)

 ベネット氏は、韓国が2015年に南北軍事境界線付近で拡声器による宣伝放送を再開した際、北朝鮮が中止を求めて即座に動いたことを挙げ、正恩氏は不都合な情報を流されることに神経を尖(とが)らせていると指摘。「経済制裁は住民を苦しめるため、正恩氏に直接影響を与えることをしなければならない。そのカギを握るのは情報だ」と強調した。

 具体的には、住民の間ではその存在がほとんど知られていない正恩氏の異母兄・正男氏が暗殺されたことを周知すれば、「血縁関係を重視する国であり、正恩氏が兄を殺害した事実に住民は動揺するだろう」と語った。

 北朝鮮が韓国との南北閣僚級会談に応じた背景について、ベネット氏は「経済制裁が北朝鮮に打撃を与えており、正恩氏はこれを何としても止めたいのだろう」と分析。北朝鮮が平昌冬季五輪直前に近海で弾道ミサイルを発射すれば、訪問客が激減する恐れがあり、「難しい立場」に置かれている韓国の文在寅大統領に対し、北朝鮮は多くの要求を呑(の)ませようとしているとの見方を示した。

 北朝鮮が米本土を攻撃できる核ミサイルを完成させた場合、米国が日本や韓国に提供する「核の傘」の信頼性が大きく揺らぐことになるが、ベネット氏は同盟の「デカップリング」(切り離し)を北朝鮮は狙っていると指摘。ベネット氏は戦術核を日韓に配備せずに、米国の拡大抑止の強化を図るべきだと主張した。

(ワシントン早川俊行)