南北会談、「最大限の圧力」かけ続けよ


 韓国と北朝鮮の高官級会談が9日に板門店で開かれる。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が「新年の辞」の演説で、平昌五輪への代表団派遣や韓国との対話の用意を表明したことがきっかけだ。

 しかし、北朝鮮に対する国際包囲網が緩むのではないかと懸念する声も上がっている。韓国は日米両国と緊密に連携し、「最大限の圧力」で北朝鮮の核放棄を目指す姿勢を堅持すべきだ。

正恩氏の「対話攻勢」

 「新年の辞」の演説後、南北間の連絡チャンネルが約2年ぶりに再開したほか、米韓両国は2月に開幕する平昌五輪期間中は合同軍事演習を実施しないことで合意した。だが、これを緊張緩和とみるのは早計だろう。

 正恩氏は演説で「米本土全域が核攻撃射程圏内にあり、核のボタンが事務室の机の上にいつもある」と述べている。核・ミサイル開発を進める姿勢に変化は見られない。日米韓3カ国をはじめとする国際社会は、北朝鮮に最大限の圧力をかけ続ける必要がある。

 年明けに始まった北朝鮮の「対話攻勢」は、日米韓の連携を崩す狙いがあろう。韓国の文在寅大統領は北朝鮮に融和的で、南北対話を切望してきた。かつて南北首脳会談の実現を目指す考えを示したこともある。

 9日の南北会談開催決定を受け、文氏は「可能なら南北関係改善や朝鮮半島の平和の転機をつくるよう最善を尽くす」としている。文政権としては平昌五輪開催に向け、北朝鮮選手団の参加を取り付けることで、欧米の一部にある五輪参加への不安を払拭(ふっしょく)する狙いもあろう。

 しかし、圧力を緩めるような譲歩は禁物だ。対話に前のめりになって乗じられることがあってはなるまい。

 トランプ米政権は南北会談に一定の理解を示しているが、マティス米国防長官は3月の平昌パラリンピック終了後に米韓演習を行うと明言している。現在の北朝鮮情勢を踏まえれば当然のことだ。

 北朝鮮が対話姿勢を示したのは、経済制裁などの国際圧力が効果を発揮しているためでもある。決して包囲網を緩めることなく、こうした揺さぶりが通用しないことを北朝鮮に思い知らせなければならない。

 国連安全保障理事会は昨年12月、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受け、石油精製品輸出を9割近く削減する制裁決議を採択した。特に、北朝鮮への影響力が大きい中国やロシアには厳格な履行を求めたい。

 これまで北朝鮮が、6カ国協議など国際社会との対話を核・ミサイル開発の時間稼ぎに利用してきたことも思い起こす必要がある。

 米国に対して強気の発言を繰り返しているが、北朝鮮のICBMには技術的課題が残っているとの見方が強い。今回の対話攻勢も、核・ミサイル技術を進展させるための時間稼ぎとの指摘もある。要警戒だ。

文政権は核放棄要求せよ

 文政権は南北会談で、北朝鮮に「完全で検証可能かつ不可逆的な核放棄」を要求する必要がある。北朝鮮に隙を見せることがあってはならない。