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張成沢氏死刑執行、北朝鮮の不測の事態に備えよ


 北朝鮮は、公職を追放された張成沢氏の死刑を執行した。張氏は金正恩第1書記の義理の叔父で「後見人」とされてきた実力者だ。今後の北朝鮮の権力構造の変化と対外政策への影響を注視する必要がある。

強硬策に傾く恐れも

 張氏は国家安全保衛部の特別軍事裁判で、クーデターを企てたとして「国家転覆陰謀行為」によって死刑判決を受け、刑は即日執行された。

 北朝鮮指導者が親類を粛清することはあったが、処刑に踏み切るのは異例だ。朝鮮労働党機関紙・労働新聞は論説で「今回、わが党が分派分子の策動を見抜き、断固として粛清したことは、党の唯一的指導体制を確立する一大事件となった」と意義を強調した。

 これに先立ち、張氏は全ての職務から解任され、党からも除名されていた。除名を決定した党政治局拡大会議は、張氏が金第1書記による「唯一指導体系」に反して自らの勢力拡大を画策し、「財政管理での不正や、国の貴重な資源を安値で外国に売り払う売国行為を働いた」と指摘。さらに女性問題や麻薬使用、外国での賭博などを列挙し、「資本主義様式に浸った堕落した生活を送った」とも非難した。しかし、それらは除名の口実にすぎないとみてよい。

 問題は張氏の存在の大きさと粛清の真の理由だ。張氏は故金正日総書記の妹である金慶喜氏の夫で、事実上のナンバー2だった。2011年12月の金総書記の死去後、金正恩体制の確立に努めてきた。

 張氏粛清の狙いは、金総書記の死去から約2年を経て、金第1書記への権力継承を仕上げることとみていいだろう。思い出されるのは、2年前の金総書記の告別式の時の情景だ。金第1書記のほか最高幹部7人が棺を乗せた車を囲んだ。

 このうち李英浩軍総参謀長、金永春人民武力部長、金正覚軍総政治局第1副局長らは既に解任された。今回、死刑を執行された張氏は金第1書記にとって残された目の上のたんこぶだったようだ。現体制の下、党や軍の幹部の約45%が交代するなど大幅な世代交代が進んでいる。

 注意すべきは対外政策への影響だ。張氏は中国との関係を重視し、中国の反発を招く核実験の強行に反対していたといわれる。張氏の死後は、党出身で軍に送り込まれた崔竜海軍総政治局長が正恩氏を支える柱の中心になるとみられる。そうなれば、対外政策で融和的だったために軍の反発を買った張氏の轍を踏まないよう崔氏が強硬策に傾く恐れがあろう。

 オバマ米政権も張氏粛清に強い関心を寄せていた。バイデン米副大統領はこのほど日中韓を訪問した際、中国で北朝鮮国内の状況について掘り下げた議論をしたという。また、ソウルで行った講演では「核兵器を求め続ける限り、北朝鮮に安全と繁栄はやってこない」と強調したが、これは北朝鮮が強硬路線に転換することを牽制した発言とみてよい。

日米韓の連携強化を

 日本としては、米韓両国との連携を強化し、北朝鮮情勢の流動化による軍の暴発などの不測の事態に備えるべきだ。

(12月14日付社説)