北への制裁、核・ミサイルの資金源遮断を


 北朝鮮が日本上空を通過する中距離弾道ミサイルを発射したことを受け、日本政府は国連安全保障理事会緊急会合で制裁決議の早期採択を要請した。

 安保理では7月の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射後、制裁を大幅に強化する決議を採択しているが、日米韓をはじめとする各国は一致して北朝鮮への圧力を高めるべきだ。

 多弾頭式技術保有の恐れ

 北朝鮮が今回発射したミサイルについて、小野寺五典防衛相は空中で分離したかどうかを慎重に分析する考えを示した。分離が成功していた場合、北朝鮮が多弾頭式のミサイル技術を保有している可能性があり、脅威が一段と高まることになる。

 安保理は今回の発射について「言語道断な行為だ」と指摘し、強く非難する米作成の議長声明を全会一致で採択した。日本政府は安保理で、北朝鮮に対する石油輸出禁止を各国に提起する方向だ。

 もっとも、核実験や長距離弾道ミサイル発射が行われていない現状での追加制裁に中国やロシアは慎重とみられる。中露両国をいかに動かすかが圧力強化の鍵となる。

 中国はこれまでも北朝鮮の不安定化を招くような強力な決議には反対してきた経緯がある。北朝鮮の体制崩壊で米軍と直接対峙(たいじ)するようになることは避けたいからだ。

 ロシアも5月、極東ウラジオストクと北朝鮮北東部の間に定期航路を新設し、貨客船「万景峰号」が就航した。北朝鮮への影響力を強めて米国を牽制(けんせい)する狙いだろうが、制裁の抜け穴となる恐れがある。

 中露両国とも安保理常任理事国だ。それにもかかわらず、安保理決議違反の弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮を擁護するかのような態度は到底容認できるものではない。

 北朝鮮への圧力を高めるには核・ミサイル開発の資金源を遮断する必要がある。このためには「第三国制裁」を拡大することも求められる。

 今回のミサイル発射前、トランプ米政権は北朝鮮の核・ミサイル開発に関与したとして、中国やロシアなどの企業10社と個人6人を制裁対象に追加した。日本政府も、中国やナミビアの企業などを含む6団体と関係者2人を資産凍結の対象に追加し、米国と歩調を合わせた。このほか、日米は北朝鮮のマネーロンダリング(資金洗浄)に関わった中国の丹東銀行などを資産凍結の対象に追加している。

 トランプ政権は北朝鮮の核・ミサイル問題で中国による影響力行使を期待してきたが、中国が本腰を入れていないことへの不満の表れといえよう。

 米国は2005年にマカオの金融機関バンコ・デルタ・アジア(BDA)を取引禁止対象に指定した。BDAの口座には北朝鮮の資金がプールされていたが、米国がそれを押さえたことで北に大きな打撃を与えた。

 中国の金融機関も対象に

 BDAの口座にはまとまった資金があった。だが、今は北朝鮮も資金を分散させていると思われる。

 中国の金融機関や銀行業務をしている企業を幅広く制裁対象にすべきだ。