韓国大統領演説、本当に未来志向重視なのか


 日本統治からの解放を記念する韓国の光復節行事で文在寅大統領が恒例の演説をし、対日関係について初めて詳細に言及した。未来志向を重視すると語る一方、いわゆる従軍慰安婦や戦時中の韓半島出身徴用工に触れ、未解決の「歴史問題」との認識を示して日本側に対応を促した。決着済みのこれらの問題を蒸し返すのは明らかに未来志向の精神に逆行している。

 慰安婦・徴用工で要求

 文大統領は演説で、慰安婦・徴用工の問題を解決するため「被害者の名誉回復と補償、真相究明と再発防止の約束」という「国際社会の原則」を守るべきだと主張し、日本の政治家に「勇気ある姿勢」を求めた。

 文大統領は5月の大統領選で一昨年の日韓「慰安婦」合意の見直しを公約に掲げた。就任後、日本が拠出した10億円を元慰安婦に手渡す事業をしてきた韓国の「和解・癒やし財団」の活動を調査し、合意を検証する作業が関連省庁でも始まった。

 しかし、慰安婦問題は日韓が合意で「最終的、不可逆的に解決」したと確認した。この合意を前政権の「負の遺産」のごとく扱い、被害者感情に影響されやすい国内世論の反対を口実に反故(ほご)にしてしまうことこそ「国際社会の原則」に背くものだ。

 徴用工問題もしかりだ。韓国は1965年の日韓基本条約と請求権協定により対日請求権が「完全かつ最終的に解決された」ことに同意した。その後も李明博政権が請求権の消滅を確認したが、「個人請求権は消えていない」とする大法院(最高裁)判決を機に態度を一変させた。

 元徴用工やその遺族が起こした訴訟では、このところ日本企業に賠償を命じる判決が相次いでいる。韓国司法は政権や世論に左右される傾向があると指摘されてきたが、文大統領の演説を機に賠償命令判決が増えていきはしまいか心配だ。

 韓国では、民間会社がソウルの路線バスの座席に期限付きで慰安婦像を設置したり、二大労働組合がソウル竜山駅前の国有地に政府の許可を待たず徴用工像を建立したりした。文大統領の演説はこうした反日行動を助長することになりかねない。

 文大統領は慰安婦・徴用工問題と関連し、当時の「強制動員」の実態を、南北関係が改善すれば北朝鮮と共同で調査する考えを示したが、これも看過できるものではない。北朝鮮と反日で共闘しようという発想の背後には日韓分断を狙う北朝鮮の工作が影を落としているからだ。

 今なお北朝鮮志向の強い在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の影響を受ける在日朝鮮人たちが故郷である韓国を訪問できるよう人道主義の立場から検討するという文大統領の話も要注意だ。こうした措置は北朝鮮の工作の温床となる恐れがある。数年前に発覚した北朝鮮のスパイ事件では、在日朝鮮人と韓国の親北朝鮮派が密(ひそ)かに接触したことが分かっている。

 こだわり強い歴史認識

 文政権は日韓摩擦の原因となってきた歴史認識問題を両国が協力すべき安保・経済と切り離すツートラック政策を敷くと言っているが、やはり歴史認識へのこだわりは強いようだ。未来志向への悪影響が懸念される。