成功法則から外れたサード論議


韓国紙セゲイルボ

慎重さ欠く大統領府の対応

 文在寅(ムンジェイン)政府が成功するためには外交安保の軸が堅固でなければならない。金大中(キムデジュン)政府は太陽政策を実施する前に米国と日本を説得することに多くの精魂を傾けた。盧武鉉(ノムヒョン)政府も米中間の均衡者の役割を主張しながらも、イラク派兵など現実路線に従った。文在寅政府も二つの前任政府の実利路線を受け継ぐことが望ましい。

迎撃ミサイル

米軍の迎撃ミサイル発射実験=5月30日、米西部カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地(AFP=時事)

 であるならば、サード(高高度防衛ミサイル)配備論議は百害あって一利なしであり、南北交流協力の拡大もタイミングを遅らさなければならない。

 ビル・クリントン元米大統領は自叙伝「マイライフ」で、「われわれが本当に外交安保イシューをうまく行った場合、国民はそれを知らないだろう。犬が吠えないためだ」と述べている。

 何の話か。外交安保で成功しようとするなら、関連イシューが新聞のトップ記事になる前に防いだり、緩和させなければならないという意味だ。問題が公開されて、懸案とならないように、あらかじめ緻密で計画的に対処しなければならないということだ。

 サードは頭の痛い問題だ。韓米同盟を強固に守りつつ、中国を説得しなければならない。この深刻な問題はまず冷ましてから食べるべきだ。タイミングが重要なのだ。

 ところが、大統領府が政権の序盤期に、それも韓米首脳会談を目前にしながら、論議の的にしたことは謎である。国防部の誤りが大きい。サード発射台4基の追加搬入の事実を迅速で正確に軍統帥権者(大統領)に報告したならば、傷を広げることもなかっただろう。大統領府があえて“国内的措置”で済むものを“非常に衝撃的”として、メディアに与えてトップ記事にさせたことは、クリントンの成功法則からは大きく外れる。

 外交安保は相手がいるゲームだ。米国は韓国の血盟だが、超強大国である。何より事業家気質を前面に打ち出すドナルド・トランプ大統領時代ではないのか。こういう米国を相手にゲームをする時は薄氷を踏むように慎重でなければならない。

 大統領府の要求のとおり環境影響評価を厳格にすれば、サード砲台の完全な配備は2年もかかるという。にもかかわらず中国は相変わらず、サードの完全な撤収を要求して、大統領府を圧迫する。

 国政運営は現実を土台としなければならない。ひたすら力と国益が言語の国家間に、正義と名分論、根拠ない楽観論を持ち込んで何の意味があるのか。

(白永喆(ペクヨンチョル)論説委員兼論説委員、6月8日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。