北ミサイル連射、この暴挙いつまでも許すな


 また北朝鮮が弾道ミサイルを発射した。これで3週連続、今年だけで9回目というハイペースだ。その多くは日本海に落下しており、日本としては近くを航行する航空機や船舶への影響はもちろん、領空・領海・領土で被害がいつか発生するのではないかということに対する深刻な懸念を抱かざるを得ない。こうした暴挙をいつまでも許すわけにはいかない。

一つ間違えば領土に落下

 北朝鮮は29日朝、日本海沿いの東部・元山付近から「スカッド」とみられる短距離弾道ミサイルを東に向け発射。ミサイルは約400㌔飛行して島根県隠岐諸島の北300㌔ほどの日本の排他的経済水域(EEZ)内に落ちた。

 国営の朝鮮中央通信は北朝鮮外務省の談話として、これまでは日本国内にある米軍基地が照準に入っていたが、「日本が米国に追従し敵対的になるなら標的は変わるしかない」として米軍基地以外への攻撃を警告した。

 こうした北朝鮮の言動は、イタリア・タオルミナでの先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)の場で日米が主導して対北圧力の必要性を確認したことへの反発とみられている。自ら軍事的緊張を高めておきながら、相手が強硬姿勢を示すとそれを口実にさらに挑発を畳み掛けてくるのは北朝鮮の常套(じょうとう)手段だ。

 各種の弾道ミサイル発射は技術力向上と周辺国へのメッセージ発信の両方に目的があるとされているが、何より看過できないのは、その多くが日本海に落下し、そのたびに日本側に緊張と不安が広がっていることだ。

 特に日本海沿いにある原発や日本海で操業する漁船の安全が脅かされ、関係者は危機感を募らせている。不測の事態に備えなければならない。一つ間違えば日本の領土に落下しないとも限らない。

 北朝鮮メディアはミサイル発射が最高指導者の金正恩朝鮮労働党委員長の立ち合いの下で行われたとしばしば報じている。金委員長の指示で発射が繰り返されているのだろうが、日本の安全保障を脅かし続ける行為は断じて許されないということを金委員長は十分認識していないようだ。

 安倍晋三首相は最優先課題である北朝鮮による日本人拉致問題について「解決なくして北朝鮮は明るい未来を描けないことを悟らせる」と意気込みを述べてきた。ミサイル問題もこれ以上暴挙が続けば北朝鮮は後悔することになると認識させねばならない。

 トランプ米大統領は「全ての選択肢がテーブルにある」と述べて対北軍事行動を否定していない。金委員長はこれを重く受け止めなければならない。北朝鮮が最終的に目指しているとみられる米本土への核攻撃能力獲得を、米国が何もせず見守るなどということはあり得まい。

危うい韓国の対話重視

 日米を中心に対北包囲網を築く中、今月発足した韓国の文在寅政権が対話重視の姿勢をにじませている。北朝鮮は国際社会による経済制裁で韓国の経済支援に活路を見いだそうとする可能性がある。南北協力が北の核・ミサイル開発に悪用された前例を文政権は直視すべきだ。