北ミサイル発射、日米韓は安保スクラム崩すな


 北朝鮮が北西部の亀城付近から弾道ミサイル1発を東方に発射し、約800キロ飛んで日本海に落下した。日本に直接の被害はなかったとはいえ、看過できない重大な脅威である。

 北朝鮮の狙いを見極めつつ、日米韓3カ国を中心とする国際社会の連携を通じミサイル発射を自制するよう圧力をかけ続けなければならない。

高速落下なら迎撃困難

 今回の発射はロフテッド軌道と呼ばれ、通常よりも高い高度まで上昇させて射程を抑える方法が取られたようだ。問題は約30分間の飛行で2000キロを超える高度まで達したとみられる点だ。

 これを通常軌道に換算すると水平に4000キロ以上飛行したことになり、いよいよ米ハワイを射程に入れることが可能になる。北朝鮮にはより現実的な脅威を米国に与えることで今後、米国との協議を有利に運ぼうという思惑があるのだろう。

 北朝鮮の朝鮮中央通信は今回のミサイルについて「新型の中距離弾道ミサイル『火星12』」で「公海上の目標水域を正確に打撃した」と報じた。北朝鮮がより精度の高い弾道ミサイルの開発に近づいているとすれば、すでにミサイルの射程内にある日本は極めて深刻な脅威にさらされることになる。

 特にロフテッド軌道による攻撃は落下速度が速く、その分迎撃が難しくなると言われる。日本は現在、イージス艦搭載のSM3や地上配備型のパトリオット3(PAC3)などが主力だが、より多層かつ多彩な迎撃体制を構築する必要があろう。

 北朝鮮はミサイル技術の向上を誇示するとともに周辺国に何らかの政治的メッセージを投げ掛けているものとみられる。

 日本人拉致問題の解決を最優先課題に掲げ、独自の制裁を続ける安倍晋三政権や就任以降、対北圧力を強めるトランプ米政権に対しては、圧力には屈しないという断固たる姿勢をアピールしているようだ。

 先の大統領選挙で政権交代したばかりの韓国には揺さぶりを掛けた形だ。左派の文在寅大統領は北朝鮮との対話に意欲的だが、就任早々冷や水を浴びせられ、対応に追われた。

 今のところ北朝鮮の武力挑発を非難し、北朝鮮が態度を改めることが対話の前提だとしているが、側近が南北首脳会談に言及するなど対北融和路線をにじませている。北朝鮮に足元を見られないか心配だ。

 ミサイルが発射された日は、中国が国家の威信を懸けた巨大経済圏構想「一帯一路」をテーマにした国際会議の開会日だった。発射は国際社会による対北経済制裁に参加するよう米国に強く求められている中国に対する牽制(けんせい)の意味も込められていたようだ。

いつでも6回目核実験

 北朝鮮は最高指導者・金正恩朝鮮労働党委員長が決断さえすれば、いつでも6回目の核実験に踏み切れる状態だと言われる。今後も各種弾道ミサイルの発射を繰り返す可能性が高い。韓国に誕生した親北左派政権が仮に融和路線に舵(かじ)を切ったとしても、日米韓はこと安全保障問題においてはスクラムを崩してはならない。