きょう韓国大統領選


左派の文在寅氏が優勢維持

 昨年の国政介入事件を発端とする朴槿恵前大統領の弾劾・罷免に伴い前倒しされた第19代韓国大統領選挙が9日実施される。約9年ぶりの保守から左派への政権交代となるかが最大の焦点だ。

文在寅氏

共に民主党の文在寅候補

 選挙戦は朴前大統領とその支持母体だった与党・自由韓国党を「清算すべき積弊勢力」と称し、圧倒的な支持による政権交代を訴える最大野党・共に民主党の文在寅候補(64)が優勢を維持。北朝鮮の武力挑発など安保危機に直面する状況で左派政権誕生は防ぐべきだと主張する与党・自由韓国党の洪準杓候補(62)、保守・革新という既存の枠組みを脱し既得権から離れた中道を目指す国民の党の安哲秀候補(55)の2人が事実上、文候補を追う形だ。

洪準杓氏

自由韓国党の洪準杓候補

 3候補は選挙戦最終日の8日、いずれもソウル中心街で遊説した。文候補は「圧倒的政権交代が必要だ。僅差では『国政壟断(ろうだん)勢力』が民生、安保で足を引っ張る」と訴えた。洪候補は「体制競争で親北左派に国を明け渡すわけにはいかない」と警鐘を鳴らし、安候補はフランスで中道系無所属のマクロン氏が大統領に当選したことに触れ「韓国も既得権政治の終焉(しゅうえん)を告げる国になる」と述べた。

安哲秀氏

国民の党の安哲秀候補

 今回の選挙は朴前大統領の弾劾・罷免という異例の事態で文候補が「棚ぼた式」に有利な立場を確保、逆に保守系候補は最初から劣勢に立たされた。昨年4月の総選挙で惨敗した与党は有力な大統領候補を擁立できず、任期満了で昨年12月帰国した潘基文・前国連事務総長や大統領の権限を代行している黄教安首相などが有力視されたが、いずれも出馬を辞退した。

 一時、支持率で文候補と拮抗した安候補は保守系候補と一本化する可能性が指摘され、「文候補優勢論」が揺らいだ。しかし、最後まで中道・保守の一本化は実現せず、テレビ討論会で安候補の不慣れな受け答えに失望感が広がったほか、選挙戦終盤は文候補と洪候補による保革対決の様相を呈し、安候補が支持率を低下させた。

 4日、5日の両日に不在者投票が行われ、投票率が26・1%に達するなど関心の高さを示した。9日の投票は午前6時から午後8時まで。終了と同時にマスコミ各社の出口調査が発表され、同日夜遅くにも大勢が判明する見通しだ。

(ソウル上田勇実)