「一飯」が動かす北東アジア情勢


韓国紙セゲイルボ

米国務長官、韓国で晩餐に招かれず

 中国古代の名将・韓信は不遇だった若い頃、寄宿していた村長の家から追い出された後、川辺で洗濯していた老婆から飯をもらって食べた。司馬遷「史記」の「韓信盧綰列伝」は後日、楚王となった韓信が老婆を探して、手厚くもてなし千金を下賜したという後日談を伝える。美談だ。「一飯之恩」は時には国際関係を揺り動かす妖物にもなる。

黄教安氏(右)とティラーソン氏

17日、ソウルで韓国の黄教安大統領代行(右)と握手を交わすティラーソン米国務長官(AFP=時事)

 大韓民国外交安保懸案がまさに「一飯」の問題だ。15~19日、韓・中・日3国を歴訪したティラーソン米国務長官が投げた一言が意味深長だ。長官は韓国では唯一晩餐(ばんさん)を行わなかった。その理由として「彼ら(韓国政府)は私を晩餐に招かなかった。訪問終盤になって(晩餐をしなければ)大衆に見栄えが良くないという考えで、『私が疲れて、晩餐をしなかった』としたようだ」と説明した。

 まず、美談とは程遠い不祥事と見るほかはない。韓国外交当局は落ち着かない。ティラーソン氏の発言が正しいなら面目がなくなり、世界最強国の外交責任者を相手に「一飯」の話もしなかったという意味になるからだ。例え明快な解明資料があっても傷をぶり返させる副作用の方が大きいだろう。米国務省は20日のブリーフィングで「長官が疲れて夕食を断ったというのは事実でない」とティラーソン氏の説明を繰り返した。

 ティラーソン氏の訪韓日程中、公式晩餐がなかったのは不動の事実で、それは外交的失策という点で間違いない。しかも「一飯」よりもっと大きい問題はティラーソン氏が公開で不満を表したという事実だ。

 彼の他の発言も尋常でない。日本を「最も重要な同盟国」とし、韓国を「重要なパートナー」といった。両国を差別待遇したのだ。オバマ政府が韓米同盟を「リンチピン」(核心軸)と見なしたこととは雲泥の差だ。ホワイトハウスの主人まで同じ考えならば韓米同盟と韓国安保の将来を楽観する道がなくなる。

 中国のサード(高高度防衛ミサイル)報復、北朝鮮のミサイル発射兆候など、北東アジアの海はすでに波高しだ。こうした局面で最も強固な安保の支えである米国までが韓国を軽視したり無視する側に回ればどうなるか。韓国の立場を度外視したまま韓半島懸案が議論され、その運命が決定されるいわゆる「コリアパッシング」の憂慮も日に日に高まっている。ひょっとしてティラーソン氏の晩餐発言に北東アジア情勢が含まれているのではないのか深く省察しなければならない。

(李承鉉(イスンヒョン)編集者、3月21日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。