対北朝鮮政策、米国は強い姿勢で圧力高めよ


 マティス米国防長官は就任後初の外遊先として韓国を訪れ、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の脅威について、トランプ米政権が「最優先の安保課題」として取り組む方針を表明した。

 米国防長官が韓国訪問

 北朝鮮はオバマ前米政権下では、計4回の核実験を強行。昨年は、短距離や長距離のほか、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など20発以上の弾道ミサイルを発射した。金正恩朝鮮労働党委員長は今年1月1日の演説で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の準備が「最終段階に達した」と主張した。脅威は高まる一方だ。

 北朝鮮の核・ミサイル開発は国連安全保障理事会決議に違反するものだ。地域を不安定化させるものであり、日本としても到底容認できるものではない。安全保障面での米韓両国との連携が重要だ。

 マティス氏は「核の傘」を含む「拡大抑止」などを通じ、韓国を防衛していく意思を強調。最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の在韓米軍への配備を計画通りに進めていくことで韓国側と一致した。THAAD配備をめぐっては、反発する中国の圧力も予想されるが、ミサイル防衛強化のために実現する必要がある。

 一方、北朝鮮の対韓国窓口機関、祖国平和統一委員会は、米韓が3月に実施する合同軍事演習「キー・リゾルブ」を非難して「戦争演習をやめない限り、核戦力を中心とする自衛的国防力と先制攻撃能力を引き続き強化する」と警告した。演習中に挑発を仕掛ける恐れもある。米韓両国はキー・リゾルブを例年よりも強化、拡充して実施することで合意した。万全の対応が求められよう。

 もっとも、トランプ大統領誕生が決まった昨年の米大統領選以降、北朝鮮はミサイル発射を行っていない。トランプ氏の強い姿勢が一定の抑止効果を上げているとみることもできる。今後も北朝鮮への圧力を高めていくべきだ。

 正恩氏は対外的に核・ミサイルによる挑発を行う一方、国内では幹部の処刑などによって引き締めを図っている。2013年12月に正恩氏のおじである張成沢氏が処刑された。昨年7月には金勇進副首相が最高人民会議(国会)での姿勢が悪かったために銃殺刑を受けた。このほかにも、多くの幹部が処刑されている。

 今年に入ってからも、正恩氏の最側近の一人で、秘密警察トップに当たる金元弘国家保衛相が解任されたほか、国家保衛省の次官級を含む多数の幹部が処刑されたという。金元弘氏の失脚は、党組織指導部が保衛省の勢力拡大を警戒し、政敵を排除しようとした権力闘争との見方が強い。

 経済発展はできない

 正恩氏は「核開発と経済建設の並進路線」を掲げている。しかし、核・ミサイル開発を続ける限り、国際社会による制裁は強まるばかりだろう。

 成果を上げるための無理な動員で、住民の不満も高まっているようだ。今のままでは経済発展はできないことを正恩氏は認識しなければならない。