北核実験10年、暴走許した轍踏まぬ覚悟を


 2006年10月9日、北朝鮮が北東部の咸鏡北道豊渓里で最初の核実験を実施してからちょうど10年が経過した。北朝鮮はこの間、同じ実験場で5回の核実験を強行する一方、運搬手段となる各種弾道ミサイルの発射を繰り返し、小型化・軽量化された核をミサイルに搭載する核攻撃の能力をアップさせた。日本をはじめ周辺国はこの危険極まりない暴走に歯止めを掛けられないままだ。

日米韓は「失われた10年」

 この10年間、北朝鮮は核爆発の威力を増大しつつ、弾道ミサイルの射程延長や命中精度などで一定の成果を上げた。

 爆発の威力は1回目がTNT火薬換算で推定1㌔㌧未満だったのが、段階的に規模を拡大し、先月の5回目では広島に投下された原爆に近づく推定約10㌔㌧だった。長距離弾道ミサイルも射程6700㌔以上の「テポドン2」やその改良型を失敗も含め5回発射。改良型は米本土に届く射程1万㌔の大陸間弾道ミサイル(ICBM)級で、完成が危ぶまれる段階にきている。

 さらに北朝鮮は発射を事前に察知されにくい潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の試射を何度も行って射程を延長させ、同時多発の飽和攻撃を彷彿とさせる中距離弾道ミサイル「ノドン」の3連射では、ミサイルをほぼ同地点に着弾させた。

 多くの専門家が実戦配備に近づいたと憂慮している。北朝鮮核問題を解決できなかった日米韓3カ国にとって「失われた10年」と言える。

 なぜ国際社会はこうした深刻な事態を収拾できなかったのか。国連安全保障理事会は北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を行うたびに非難声明を発表したり、制裁決議を採択したりしてきたが、中国が制裁を本気で行わないなど抜け道が多い。中朝国境をまたぐ地下パイプラインを通じ、今も中国から北朝鮮に年間50万㌧の原油が供給されていると言われる。

 北朝鮮の核問題解決を話し合う6カ国協議は、北朝鮮の非核化という言葉だけが踊り、事態は協議の最終目標とは真逆の方向に向かった。これも議長国だった中国の、北朝鮮に核を放棄させる姿勢があいまいだったためというのが一般的な見方だ。

 だが「中国の責任」とばかり言ってはいられない。政権交代のたびに対北朝鮮や安全保障の政策がコロコロ変わるようでは「核大国」を目指し一糸乱れぬ北朝鮮に付け入る隙を与える。

 北朝鮮問題は党派を超えた結束、政治家の業績づくりにとらわれない一貫した姿勢なしに解決はおぼつかない。この点で日米韓3カ国は猛省が必要だ。

 今後は、北朝鮮が対話や交渉に応じてきた際は「核放棄に応じるかもしれない」という楽観的観測を排除して臨むことだ。核開発が独裁政権維持の大前提になっていることを忘れてはならない。

6回目核実験の恐れも

 明日(10月10日)の労働党創立記念日を前に北朝鮮は米国を「近い将来、身震いする現実に直面する」と威嚇、6回目の核実験に踏み切る恐れもある。北朝鮮に核開発を許した10年の前轍を踏まない覚悟なくして暴走を止めることは難しい。