米国の核戦略変化を見極めよ


韓国紙セゲイルボ

「北」抑止へ総合的取り組みを

 オバマ米大統領は、これまでタブー視してきた「核先制不使用」政策の採択を考慮しているという。これに敏感に反応した日本が米軍首脳部に、「核先制不使用は北朝鮮の核ミサイル脅威を抑止できる手段をなくすため、採択してはならない」と強力な警告を送っているのに対し、韓国内では政争とサード(THAAD・高高度防衛ミサイル)論争に拘泥して、何の対応もできずにいるのが現実だ。

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22日、韓国で始まった米韓両軍の合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」に合わせ、国家安全保障会議(NSC)を開催する朴槿恵大統領(左から2人目)(韓国大統領府提供・時事)

 核分野でオバマの業績が大きいのは否めない。オバマは核テロを予防するために、核安保首脳会議を提案して、4度の首脳会議を直接主管し、核安保という概念をつくって、核安保レジームをつくり出した。

 しかし、オバマの「核なき世界」が持つ問題点を見過ごすことはできない。米国の伝統的核抑止戦略は核兵器、先端在来式兵器、ミサイル防御能力をもって、敵対国の核攻撃を抑止するというものだった。しかし、オバマは先端在来式兵器とミサイル防御に重点を置いて、核兵器使用を制限する方に傾いている。それによって増加する北の核ミサイル脅威に対する抑止能力に一定の限界を設けてしまったと言われている。

 また、北の核問題に戦略的忍耐で一貫したが、問題の解決には何の進展もなく、北の核ミサイル実験に対して警告と制裁という受動的な対応だけ繰り返すことで、核問題は統制不可能になってしまったという批判を受けている。

 米国の安保専門家たちは次期政府では米国の核兵器使用の可能性を排除しないことで、核抑止戦略がより一層強力で効果的になると注文する。

 サードの配置という個別的兵器体系の配備だけに重点を置くのではなく、米国のすべての兵器体系を動員して、総括できる現実性ある核抑止戦略を提示することを要求しているのだ。

 特に今後5年内、北朝鮮が核兵器を多量保有し、米国本土を攻撃できる大陸間弾道弾を持つと予想されるため、能動的核抑止戦略が求められている。

 したがって、韓国内でも北核ミサイルに対する個別的兵器体系導入を含んだ総合的核抑止戦略が出てこなければならない。サードとそれに関連した韓中関係、米中関係の波紋にだけ気を遣う近視眼的な国内的政争に巻き込まれる時ではないのだ。

 オバマ政府の核なき世界と拡張抑制戦略、戦略的忍耐にだけ埋没しているのでなく、次期米政府に韓国の国益に合う核抑止戦略をあらかじめ注文することができるように万全の準備をしていかなければならない。

(韓庸燮(ハンヨンソプ)国防大教授、8月19日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。