慰安婦支援財団、日韓合意の中断なき履行を


 昨年末のいわゆる従軍慰安婦問題をめぐる日韓合意に基づき、韓国政府が設置する元慰安婦を支援する財団の設立準備委員会が発足し、委員会のメンバーが集まってソウルで初会合を開いた。合意から約5カ月、その履行に向けようやく第一歩を踏み出したことになる。

設立準備委員会が発足

 準備委の委員長には女性・高齢者の福祉問題の専門家として知られる金兌玄・誠信女子大学名誉教授が就任し、10人の委員には元外相で駐日大使も務めた柳明桓氏や外交省と女性家族省の各局長、日本研究の第一人者、弁護士らが選任された。委員長と委員は今月中をメドに設立される財団のそれぞれ理事長、理事になる見通しだ。

 韓国では日韓合意に今なお否定的な世論も多く、こうした職務に就くことはある種の覚悟が必要だったと察する。今後、財団の活動に支障が生じないよう願いたい。

 韓国内では準備委発足に早くも反発が起こっている。金委員長が日本政府の予算から財団に拠出される10億円の給付金について「癒やし金であり賠償ではない」と発言すると、韓国メディアは日本の責任を問わないのかと批判した。結局、金委員長は給付金の性格を「日本が国家犯罪と認めたため」と述べ、前言を覆す羽目となった。

 在ソウル日本大使館前で毎週、慰安婦問題の反日デモを主導している市民団体の挺身隊問題対策協議会は「反対の声を無視し、独断で財団設立を強行する政府に絶望と怒りを感じる」と表明。野党は日韓合意そのものを「無効」と主張している。

 だが、韓国政府はこうした反対世論を前に尻込みしてはいられない。日韓合意は「最終的かつ不可逆的」な解決であることを確認したものだからだ。

 高齢化する元慰安婦に支援が届くためにも、これまで以上に元慰安婦に理解を求めながら財団の活動を早く軌道に乗せなければならないはずだ。

 日本も韓国国内の問題だとして静観を決め込むだけでは不十分だ。特に政治家など責任ある立場にいる人たちは韓国側を必要以上に刺激するような言動を慎む配慮が欠かせない。

 財団への給付金をめぐり日本大使館前の少女像撤去問題が立ちはだかる可能性も出ている。合意には少女像撤去を給付金の前提条件にするという文言はなく、韓国政府の努力目標として記されているが、正常な二国間関係を考えればいずれ撤去すべきは論を俟(ま)たない。

 韓国の反日感情に火をつけかねない敏感な問題でもあり、双方が知恵を尽くして解決する課題だ。

 大事なのは過去最悪とまで言われた日韓関係を改善させる契機となった「慰安婦」日韓合意の精神を尊重し、合意内容の履行を中断なく進めることだ。

日米韓の安保連携も

 拉致・核・ミサイルで周辺諸国の脅威となっている北朝鮮の挑発に備えるためにも、日韓はそれぞれの米国との同盟関係を軸に3カ国連携を維持・強化しなくてはならない。歴史認識問題で関係を悪化させ、安全保障の連携にひびが入ることは絶対避けなければならない。