ゲーム理論と北朝鮮問題


韓国紙セゲイルボ

 古典的なゲーム理論で「ブロットー大佐のゲーム」がある。ブロットー大佐はN名の軍人をM個の戦場に配置する。敵国もこれと同じくN名の軍人をM個の戦場に配置する。この時、軍人をより多く投じて勝利する戦場が多い側が勝利を収める。

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10日午前、北朝鮮の平壌で開かれた党大会を祝うパレード(朝鮮中央テレビより撮影)(時事)

 このゲームは戦争だけでなく選挙などのさまざまな分野に応用できる。米大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏と民主党のヒラリー・クリントン女史が50州で構成された“戦場”で“代議員獲得”という戦闘をする時、どの州にどの程度の火力を投じるのか、戦略を立てようとするなら、ゲーム理論を応用することができるのだ。

 米エール大学の政治学者のポール・ブラッケン教授はこのゲーム理論で北朝鮮問題をどのように解くべきか解答を提示するエッセイを「エール・グローバル」(電子版)に発表した。同教授は、「米国では北朝鮮問題がイスラム国家(IS)などやや緊急な懸案によって、いつも後回しにされている」と指摘する。

 彼は「短期的な関心事に集中すると、毎回長期的に重要なイシューを逃す」とし、米国の対北朝鮮政策は大局を逃しており、大惨事を呼び起こす可能性もあると警告した。

 ブラッケン教授は北朝鮮問題を米国と中国にも適用している。ゲーム理論で見れば、アジア・太平洋地域で米国と中国は▲北朝鮮▲南シナ海領有権対立▲両岸問題(中台問題)の3個の核心戦場で対決している。米国は3戦場で独立したゲームをしたがるが、中国がこれを容認しない。個々の戦場が連携しているためだ。

 中国が南シナ海に人工島建設および軍事施設構築等で火力を集中配置すると、米国は航空母艦配置とB52爆撃機の威嚇飛行などで対抗している。米国が南シナ海に張り付いていれば、北朝鮮を制御するよう中国に圧力を加えるのに手が回らないわけだ。

 ブラッケン教授は米国がこのゲームで勝利しようとするなら、ゲームの属性を理解して大きい絵を描くべきだと主張する。北朝鮮の最近の核実験を契機に国際社会に“第2の核兵器開発競争”時代が到来している現実を直視するのが何より重要だと彼は強調した。

 これはあくまでも米国の立場で、韓国の事情は違う。特にトランプ氏が韓国の「安保タダ乗り論」、韓国の核武装容認、在韓米軍撤収の可能性など、メガトン級の公約を乱発し、自身が大統領になれば韓半島に配置する米軍がゼロになりうると脅している中で、韓国は北朝鮮問題をめぐる米中のゲームを呑気に見ていられる立場ではない。

 韓国が国益を極大化する北核解決法のアルゴリズムを作らなければならない。そして米国と中国がこれを受け入れるように動かなければならない。このアルゴリズムには当然「トランプ変数」が入っていなければならないだろう。

(鞠箕然(クッキヨン)ワシントン特派員、5月9日付)

記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。