北朝鮮党大会、「核保有」は容認できない


 北朝鮮で第7回労働党大会が開かれた。金正恩氏は、北朝鮮が「責任ある核保有国」であると強調したが、到底容認できるものではない。

 金正恩氏が委員長に

 党大会は1980年以来、36年ぶりに開かれた。当時は正恩氏の祖父である故金日成主席の時代で、党大会の開催には今も国民から尊敬を集める金主席の威光を利用して権力基盤を固める狙いがあろう。正恩氏は今回、第1書記に代わる党最高位のポストの委員長に推戴され、偶像化が一層進んだ。

 党大会の開会式では今年1月の核実験と2月の長距離弾道ミサイル発射を自賛。3日目の活動総括報告では「責任ある核保有国」であることを強調した。北朝鮮は2012年の憲法改正で「核保有国」としての地位を明記した。今回の発言は核保有を既成事実化し、米国などと対等の立場で渡り合おうとする姿勢の表れだと言える。

 だが、北朝鮮の核開発は日本を含む地域の平和と安定を脅かすものだ。国連安全保障理事会の制裁決議にも違反している。国際社会の理解を得ることは決してあるまい。菅義偉官房長官が「断じて受け入れられない」と批判したのは当然だ。

 活動総括報告では、核戦力増強と経済建設の「並進路線」を称賛し、16年から20年までの「国家経済発展5カ年戦略」を徹底して遂行しなければならないと指示した。しかし核開発を続ければ国際的な孤立が深まり、経済建設の困難さが増すばかりだろう。

 1月の核実験強行で新たな安保理制裁が科され、国際社会の締め付けは強まっている。北朝鮮の昨年の食料生産量は旱魃(かんばつ)の影響で10年以降初めて減少し、食料が大幅に不足する見通しだ。これに制裁の影響が加われば、国民生活は大きな打撃を受けよう。自らの首を絞めるような政策はやめるべきだ。

 党大会に向けては国民の無理な動員も行われた。大会前のキャンペーン「70日戦闘」は「党大会を輝かすための全党、全国家、全人民の総動員戦、総決死戦、総攻撃戦」と位置付けられ、軍事はもとより、農業、鉱工業などあらゆる分野で成果を求められた。韓国政府は「制裁や無理な党大会準備のため、住民の不満をはじめとする社会的な副作用が増幅している」と分析している。

 北朝鮮は今回、約120人もの海外メディアを受け入れた。だが党大会の自由な取材を許さず、公開したのはほんのわずかな時間だった。

 英BBCの報道内容に北朝鮮指導部が不満を持ち、記者が一時拘束されるなど、その特異な体制が改めて浮き彫りとなったと言えよう。言論や報道などの自由が保障されず、国民の人権を無視して酷使するような独裁国家に未来はない。このことを正恩氏は認識すべきだ。

 日米韓は警戒強化を

 4月15日の金主席の誕生日に合わせた中距離弾道ミサイル「ムスダン」の発射は失敗に終わった。しかし、今後も北朝鮮が核技術を高めていくことは間違いない。日本は米韓両国と連携し、引き続き警戒を強めていく必要がある。