“アルファ碁ショック”の意味


韓国紙セゲイルボ

人工知能の異常、知る術なし

 人工知能(AI)アルファ碁と李セドル9段の対局は4勝1敗でAIの圧勝に終わった。大韓民国は21世紀AIの実体を衝撃と驚き、安堵と憂慮、憐憫と感動で見守った。

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3月13日、ソウルで囲碁の人工知能「アルファ碁」と対戦する世界最強レベルの韓国人棋士、李世●(石の下に乙)九段(右)(EPA時事)

 対局で最も大きな意味は、教えないことを学習することができる能力を持ったAIが、われわれの社会にいかなる影響を及ぼすのかを推し量ってみることができたというところにある。

 20世紀のAIは、速い演算で、教えたことを精巧に具現する機械であった。だが21世紀AIは人間の直観と抽象化過程を真似(まね)したアルゴリズムがビッグデータを分析して予想できない結果値を作り出す。時にはそれが人間の直観を凌駕(りょうが)する可能性があることを目撃したのだ。

 いまや囲碁は始まりにすぎない。AIが多様に適用される未来社会、われわれはあらゆる領域で人間より優秀なAIが人間を圧倒する状況を経験するだろう。アルファ碁の指示で碁石を置く境遇に転落するかもしれない。重要決定はAIが行い、人間は印鑑だけ押す役割になるかもしれない。

 5回の対局は「AIが未来社会でいかなる脅威になりうるか」を教えてくれた。「アルファ碁が失敗したのか」という解説をたびたび聞いた。しかし、本当の脅威はAIの失敗ではない。失敗は人間が行うものだ。問題はAIが1200を超える中央処理装置とディープラーニング、強化理論など多様なアルゴリズムを結びつけて、複雑な演算で勝ち取った結果が異常ならば、どこで何が誤ったのかを知る方法がないというところにある。

 ダグラス・アダムスの「銀河ヒッチハイク・ガイド」で、宇宙で最も優れたコンピューターに「人生、宇宙、そして全てのもの」に対する究極的な答えを探せとの質問を投げかけると、750万年間、計算して出した答は「42」だった。われわれは解答を得たが、これが何の意味かわからない状況に置かれる。21世紀のわれわれの姿かもしれない。

 グーグルだけでなくIBM、フェイスブック、マイクロソフトなど世界はいまAI戦争を展開している。AIがインターネットとビッグデータを使えば、完全に新しい商業的サービスを提供することができるためだ。このため、韓国も政府と企業による若者へのAI基礎固有技術に対する長期的投資が必要だ。

 李セドルに勝つAIを作ったのはすごい成果だが、李セドルのように負けるAIを作るのは、まだはるかに遠いということを李セドルは格好良く見せてくれた。

(チョン・ジェスンKAIST教授、3月16日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。