北ミサイル発射、国際社会は包囲網を強化せよ


 北朝鮮は平壌の北にある粛川付近から中距離弾道ミサイル2発を発射した。このうちの1発は東に約800㌔飛んで日本海に落下した。

 ミサイルは日本全土をほぼ射程に収める「ノドン」とみられている。発射はわが国への脅威を増大させるものであり、決して容認できない。

 米韓に対抗して演習実施

 北朝鮮はこれに先立ち、新型多連装ロケット砲や「スカッド」とみられる短距離弾道ミサイルを日本海へ発射した。「韓国首都圏は多連装ロケット砲、釜山など韓国南部はスカッド、沖縄を含む在日米軍基地はノドンで攻撃するというミサイル戦術がはっきりしてきた」との見方を示す韓国の有識者もいる。

 弾道ミサイル発射は国連安保理決議に違反するものだ。国際社会は安保理対北制裁の厳格な履行などで、包囲網を強める必要がある。

 今回、ノドンは兆候をつかみにくい移動式装置から発射されたもようだ。日本は危機感を持ち、米韓両国との連携を強化して対策を講じていかなければならない。

 北朝鮮は現在行われている米韓合同軍事演習に強く反発している。米韓両軍は北朝鮮への上陸、内陸部への進撃を念頭に置いた過去最大規模の上陸訓練「双竜訓練」を展開しているが、北朝鮮軍はこれに対抗し、金正恩第1書記が立ち会う中、韓国への上陸を想定した大規模演習を実施した。

 一方、米国の研究機関は北朝鮮北東部にある核実験場の衛星写真を公表。「核実験をいつでも行う準備ができている可能性が高い」と分析した。5月に36年ぶりの党大会を控え、故金日成主席の誕生日(4月15日)前後に5回目の核実験を強行する恐れも否定できない。

 北朝鮮が今後、射程がグアムに届く中距離弾道ミサイル「ムスダン」(射程3000~4000㌔)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、米西海岸を射程に入れる大陸間弾道ミサイル「KN08」などの試射を行う可能性も指摘されている。しかし、こうした挑発を繰り返せば国際社会の信頼を失い、孤立を深めるだけだ。

 金第1書記は側近の粛清など恐怖政治を行っている。だが、こうしたやり方は短期的には引き締め効果が大きいが、側近たちとの信頼関係が築かれず、中長期的には体制にとっての不安材料になる。民心の離反も避けられないだろう。

 その意味では、米韓演習への強い反発も恐怖の裏返しということができる。日米韓には、こうした点も念頭に置いた対応が求められる。

 対話は非核化が前提だ

 金正恩政権は核・ミサイル開発を進め、核保有国として米政権と直接わたり合うことを目標としている。今回のノドン発射もそのプロセスである。

 停滞する6カ国協議をはじめとする各国間の対話、将来の米国との本格的な対話は韓半島の安定に向けて否定すべきではない。しかし、それには北朝鮮の非核化が前提だ。そうでなければ、対話が核・ミサイル開発のための時間稼ぎに利用されかねない。