「北」核実験、事前察知不能の衝撃


韓国紙セゲイルボ

安保能力点検、総体的措置履行を

 大韓民国は北朝鮮の核を含んだ多様な脅威に晒(さら)されているだけでなく、南シナ海を中心にした米中間の覇権競争の深化と、東シナ海での中日間の軍事的摩擦など、容易でない安保環境の中にいる。

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北朝鮮の核実験を受け、対応を協議するためソウルの外務省に集まった(左から)リッパート駐韓米大使、尹炳世韓国外相、スカパロティ在韓米軍司令官(EPA=時事)

 このような深刻な安保状況に対して、韓国の包括的な国家安保対応能力の現状はどうだろうか。外形的に見ると非常に強力な安保能力を持っていながら、国家安保システムは事実上“外華内貧”と“虚張声勢”といってよい。

 北朝鮮は6日、「水素爆弾」実験に成功したと発表した。根本的な問題はその真偽ではなく、韓国政府のすべての情報機関と国防部が北朝鮮の核実験を事前に察知できなかったと報道されていることだ。

 こうした失敗は現政権だけの現象ではないが、現政権の前現職の国防部長官らは、北朝鮮が万が一、追加的な核実験をする場合、早期警報能力を最大限に動員して、事前にとらえることができると大言壮語していたのではなかったか。

 実験以後、安保担当者の中で、韓国政府の対北情報能力が米ジョンズホプキンズ大で運営している北朝鮮関連サイトより、なぜ劣悪なのかを明確に説明できる者がいない。

 また核実験が行われるたびに持ち出される国防改革と国家安保・国家情報改善法案は相変わらず騒動だけで終わる可能性が非常に高く、責任者のただの1人も責任を負って退く者がいないのが実情だ。

 国防部はこれまで北核脅威に対応するために2023年までに構築される韓米連合先制打撃システムである「キルチェーン」に焦点を合わせていた。しかし、その大前提は北朝鮮のすべての核施設とミサイル発射場などに対する事実上100%正確な情報能力と情報共有システムがあることだ。

 しかし、米国の戦略的情報資産なしではキルチェーンは無用の長物になるほかなく、たとえ韓米間の情報共有体制が強化されるとしても、北朝鮮が核弾頭を搭載した移動式ミサイルを実戦に投じれば、リアルタイム探知はほとんど不可能だ。

 追加的な対北制裁に対して、中国とロシアが部分的には賛成するだろうが、強い制裁には反対するだろう。これまで積み重ねてきた韓中首脳間の信頼は重要な外交的資産だとしても、中国の対北政策を根本的に修正するのには限界があるということだ。

 したがって、政府は言い訳だらけの対北対応態勢をやめ、より冷静な姿勢で安保能力を点検して、総体的な措置を履行する必要がある。

(李正民(イジョンミン)延世大国際学大学院教授・国際安保学、1月25日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。