「詭道」の北朝鮮核実験、あまりにも多くのものを失う


韓国紙セゲイルボ

 北朝鮮が6日、本当に水素爆弾実験をしたのかどうかに関係なく、ことを起こしたことだけは明らかであり、非常に衝撃的だ。

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3日、水爆実験に関する文書に署名する金正恩第1書記=朝鮮中央通信が6日配信(朝鮮通信=時事)

 中国の兵法書「孫子」は計篇で「兵者詭道也」(兵は詭道なり)と教える。「戦争は不意打ちだ」という意味だ。なぜ騙すか。利益を得るためだ。「戦争論」を書いたカール・フォン・クラウゼヴィッツは欺きを敬遠しながらも「戦略」の語源にトリックの意味が含まれていると認めた。弱者がよりトリックを重視するとの指摘も付け加えた。

 北朝鮮は大韓民国だけでなく米国、中国まで欺いた。金正恩(キムジョンウン)国防委員会第1委員長は新年の辞で「核」に言及しなかった。昨年10月10日、労働党創建日ではミサイル発射実験を留保した。そうしているうちに核実験ボタンを押した。油断の虚を突いたのだ。韓国安保当局は国会で赤恥をかいた。

 では、北朝鮮は勝ったのだろうか。とんでもない。北朝鮮は核博打で失ったものがあまりにも多いのである。まず中国を失った。中国は多角的に金正恩政権にレッドカードを出している。追加核実験を繰り返し止めていた習近平国家主席の体面がひどく汚されたことは決して軽視できるものではない。

 もちろん北朝鮮を戦略的資産と見なす既存の立場が直ちに180度に転換するはずはない。しかし、両国関係は決定的に歪むことは火を見るよりも明らかで、北朝鮮の孤立も一層深化するだろう。

 北朝鮮は米国も失った。将来核戦争を行うつもりで奇襲実験をしたとすれば、言う言葉もない。しかし、そうなると北朝鮮は世界地図から消えるしかない。北朝鮮は結局、米朝直接対話を引き出すために「瀬戸際戦術」を行ったわけだが、その意に反して、オバマ政府は対話に転じるどころか、経済制裁をはじめとする全方面での圧迫を強化し、中国の協力を一層強力に要求するだろう。

 “血筋の情”で北の同胞を助ける朴槿恵(パククネ)政府も失った。「韓半島信頼プロセス」の全面再検討が不可避になっている。米国が主導する「イラン式制裁」圧迫に朴槿恵政府は、「終末高高度ミサイル防御体系(THAAD)配置」を断りきれないだろう。

 「孫子」はトリックだけを重視したのではない。「詭道」に言及した計篇でも、先に武力を使うのかどうかを慎重に見極めよと教えた。それと共に道義、天の時、地の利などを判別する知恵を強調した。北朝鮮は「孫子」を精読すべきだ。

(李承鉉(イスンヒョン)論説委員、1月9日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。