セウォル号陰謀説広める左派、大韓民国号に復原力はあるか


韓国紙セゲイルボ

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韓国客船沈没事故の行方不明者家族らに語り掛ける朴槿恵大統領4月17日、珍島(AFP時事)

 セウォル号惨事で韓国社会の地金が白日の下に晒(さら)された。きまりが悪い。一言で言えば、この惨事は韓国社会の不条理の縮図である。

 大韓民国号は今どうなっているのか。船主に当たる国民の意識水準、船長である大統領と官僚・政治家、そして乗務員である公務員たちはどうなのか。果たして各自が自らの役割と天命を正しく認識しているのだろうか。

 海洋水産部OBの韓国海運組合・韓国船級役員らはロビイストに転落した。国会未来創造委員会は2年間に法案1件だけを通過させて300億ウォン近い歳費を無駄にした。国土交通委員会は運航管理社処罰条項のないデタラメな海運法を作った。安全行政部の局長は事故現場で記念写真を撮って処分された。全部が国民を怒らせた。

 その一方で、セウォル号惨事は新聞紙上から懸案を締め出している。統合進歩党の李石基(イソッキ)「革命組織」裁判、脱北者のソウル市職員のスパイ疑惑事件、北朝鮮人権法制定などだ。統一大当たり論とドレスデン構想に続き、先月予定されていた統一準備委員会スタートもいつのことになるやら。

 従北サイトや左派陣営は、「米軍潜水艦との衝突説」など、セウォル号陰謀説を広めている。一部ではあるが「未開な国民」論が出てくる理由だ。

 大韓民国の“復原力”はあるのだろうか。建国は独立活動家らを中心にした右派が主導した。文民政府(金泳三〈キムヨンサム〉政府)の時まで基調が維持されてきたが、国民の政府(金大中〈キムデジュン〉政府)になって急旋回し、対北融和政策に舵(かじ)を切った。貨物と国民の生命を一つも固定せず予告なしに船長が急左変針したのだ。

 各界各層が理念論争で沸き立った。隠れていた進歩学者、活動家らが日の当たる場所へ出て来て左傾に拍車を掛けた。対共産主義捜査のベテランたちは国家安全企画部(国家情報院の前身)から大挙退職した。数百人の北へ拉致された人・国軍捕虜はそのままなのに、スパイなどの非転向長期囚を満遍なく北へ送還した。

 混乱が醸成された。“座礁”を直感した予備役将軍らの会である星友会がバランサーの役割をし、大統領に掛け合ってブレーキをかけた。ヒヤリとした瞬間だった。

 参与政府(盧武鉉(ノムヒョン)政府)は初期には「対北朝鮮不法送金」特検を受け入れるなど復原力を回復するかと思われたが、ある瞬間からまた左に甘くなった。

 李明博政府は左に傾く船体を立て直せないまま任期が終わってしまったが、金剛山観光客銃撃死亡事件と天安艦爆沈、延坪島砲撃事件によって、辛うじて平衡を取り戻した。

 問題は現政権だ。右左へひどく揺れた大韓民国号をどのように正しく立て直して、統一港まで導くのか心配だ。

(趙貞鎮〈チョジョンジン〉論説委員、5月1日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。