仏ノートルダム大聖堂再建は「5年以内」に疑問の声


 大規模火災で壊滅的な被害を受けたフランスのノートルダム大聖堂について、マクロン仏大統領が16日、パリ五輪が開催される2024年までの5年間で再建すると表明したことに対して、専門家の間に疑問の声が挙がっている。

ノートルダム大聖堂

2018年6月に撮影されたパリのノートルダム大聖堂の尖塔(せんとう)(左)と、今月15日の火災で焼け落ちる尖塔(AFP時事)

 仏遺産建築家協会のレミ・デサルブル会長は「このような再建プロジェクトを5年間で実現することは不可能」と述べ、「再建実施のための調査や診断に数カ月が掛かり、年を超える可能性もあり、実際の工事は4年しかないことになる」と指摘している。約1800本のオーク材で組まれた梁部分は「森」と呼ばれ、防火を考慮すれば、金属やコンクリート製にする案も浮上している。

 13世紀に作られた同聖堂を同じオーク材で梁を再建すると「少なくとも10年から15年は掛かる」と中世建築の専門家、グレゴリ・テイエ氏は指摘する。同氏は「1840年代にパリ南方にある有名なシャルトル大聖堂の修復で使われた金属の場合や、ランスの聖堂で使われた鉄筋コンクリートの梁の場合は、工期は短くなった」という。仏西部ブルターニュ地方の中心、レンヌの議事堂の屋根が1994年の火災で失われた時は、金属製のフレームを使用し、5年間で再建しているが、規模はノートルダム大聖堂よりも小さかった。また、「金属やコンクリートを選択した場合でも、設置する前に外陣の固定や清掃に時間が掛かる」とテイエ氏は指摘している。

 専門家は、再建には熟練の職人が必要で、現在、ルーヴル美術館や国立公文書館などの他の建物で多くの職人や熟練労働者が動員されており、5年でノートルダム大聖堂を再建するとなれば、他の修復プロジェクトを止めるか延期する必要があると指摘されている。

 一方、フィリップ仏首相は17日、火災で崩壊した尖塔の再建用デザインを世界中の建築家から公募する計画を発表した。政府は公募を通じて、尖塔を再建すべきか否かを決め、再建する場合は、火災で倒壊した19世紀建造の塔と同じデザインにすべきか、完全に新しいデザインにすべきかを決定するとしている。

(パリ 安倍雅信)