英国の欧州連合(EU)からの離脱が今月…


 英国の欧州連合(EU)からの離脱が今月29日に迫る中、メイ首相とユンケル欧州委員長が離脱協定案をめぐり新たな合意に達した。EUが譲歩した形だが、野党・労働党党首などは反対の姿勢を示しており、議会で承認されるかは予断を許さない。

 EU離脱問題は英国に刺さった棘(とげ)どころか、国を分断する楔(くさび)となっている。最悪の場合は「合意なき離脱」に突入し、大きな混乱を招く恐れがある。

 エリザベス女王は昨年の恒例のクリスマス・メッセージで国民の結束を訴えた。今年に入ってからも「共通の立場を見いだすために協力し、決して全体像を見失わない」美徳を強調した。直接の言及ではないが、EU離脱問題で分裂する政界に対し、大所高所からの判断を求めているのは明らかだ。

 「君臨すれども統治せず」の英王室は、政治問題には口を挟まないことになっている。どちらか一方の立場に立つものではないにしろ、こういう政治的な発言は異例である。

 先月は「合意なき離脱」となった際に懸念される暴動などに備え、英政府は女王ら王室関係者をロンドンから安全な場所へ避難させる秘密の計画を進めていると複数のメディアが報じている。

 第2次大戦中、女王の父ジョージ6世はドイツ空軍の激しい空襲の中でも「市民たちを置いて逃げるわけにはいかない」とロンドンに踏みとどまった。もし国論分裂による混乱で女王らが避難するようなことになれば、実に情けない話である。