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EU離脱案否決、合意なき離脱は英の凋落招く


 英議会下院は欧州連合(EU)離脱合意案を、賛成202、反対432の大差で否決した。

 最大野党・労働党提出のメイ内閣への不信任決議案は否決されたが、離脱期限が3月末に迫る中、「合意なき離脱」に突入する恐れが増してきた。

GDP8%減との予測も

 英議会史上かつてない大差での否決となったのは、与党・保守党内の離脱強硬派や欧州懐疑派が大量に造反し、閣外協力を行う北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)も反対に回ったためだ。労働党は保守党政権を追い込むために反対票を投じた。反EU感情の強い有権者への受けを狙って反対した議員も少なくないとみられる。

 最大の障害は、英領北アイルランドをめぐる問題だ。EU離脱後も陸続きの北アイルランドとアイルランド(EU加盟国)の国境管理は、緩やかなものとする方向で一致したが、その具体策が決まるまでは英国がEU関税同盟に残留する安全策が取られる。しかし残留期限が明示されていないため、離脱強硬派は「英国が将来もEUに隷属し続けることになる」と批判した。

 EUとの再交渉や再度の国民投票実施を前提に離脱期限を1年ほど延長するという案もあるが、ハードルは高い。

 英国の貿易は輸出入ともにEUが総額の半分近くを占める。2020年までの移行期間を設けない合意なき離脱に突入した場合、経済の混乱は極めて大きくなろう。英国はEUでドイツに次ぐ経済力を持つ。イングランド銀行は、合意なき離脱で英国の国内総生産(GDP)は最悪年間8%減少し、戦後最悪の不況に陥ると警告している。

 世界経済への悪影響も心配されるが、誰よりも大きな不利益を被るのは英国民であることを国会議員は分かっているはずである。それにもかかわらず、離脱案で妥協できないとすれば、国家理性を失った状態だと言わざるを得ない。メイ首相は21日までに代替案を提示するとしているが、英下院議員のすべてが党利党略や個人的事情を超えて、国家に対し責任ある行動を取ることが求められる。

 戦後の英国は保守党サッチャー政権が登場するまで、長期間にわたって経済の振るわない「英国病」に悩まされてきた。企業国営化方針などを掲げる労働党と自由主義経済を標榜(ひょうぼう)する保守党の二大政党による政権交代のたびに、方針が変わり混乱を招いたことが大きい。

 今のEU離脱をめぐる混乱を見ていると、英国は新しい病に侵されるのではないか、再び凋落(ちょうらく)することにならないか心配だ。離脱交渉が長引けば、それに拍車を掛けることになろう。

 すでに資本が金融街シティーをはじめ英国から移動しつつある。経済的マイナスばかりではない。離脱交渉をめぐる混乱などで、英国への国際的な評価が下がることも避けられない。

進出日本企業は準備を

 英国に進出している日本企業とりわけ現地生産する製造業などは影響が大きい。ホンダは、英国南部スウィンドン工場の稼働を4月に6日間休止するこを決めている。合意なき離脱となった場合も想定して準備をしておきたい。