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仏デモ深刻化、国難を招くポピュリズム政治


 無党派ブームで選出されたマクロン仏大統領が、激しさを増す抗議デモを受けて、最低賃金の引き上げ、労働者への優遇措置などを打ち出して鎮静化を図った。大統領選時と同様に現状に不満を持つポピュリズムの影響で、自動車燃料税増税への反対運動を引き金に起きたデモは、従来の労組のようなはっきりした主催者がおらず、無党派的に拡大して暴動や略奪なども深刻化している。

 来年の燃料増税見送り

 マクロン氏は昨年の大統領選で既存政党に属さない独立系候補としてブームを起こした。決選投票では、これまでフランスで政権を担った中道保守の共和党や左派の社会党でもなく、台頭した右派・国民戦線(現国民連合)のルペン党首との対決を制し、39歳の若さで当選した。

 続く国民議会(下院)選では、マクロン新党と称された「共和国前進」の結党から、わずか1カ月で単独過半数を得る快挙を遂げた。無党派化した支持層を一挙に集め、政権基盤を瞬く間に築いて内外から脚光を浴びた。それから1年余りで噴出した抗議デモは、国民の不満のはけ口の移ろいの早さを示しており、マクロン・ブームと表裏をなすものだ。

 デモの過激化の背景には、マクロン政権の選挙時の民意集約が不十分だったこともある。マクロン氏はテレビ演説で国民に謝罪するとともに、豊かに生活できる環境を築くことを最優先にすると誓った。

 しかし、マクロン政権が発足時に掲げた財政再建のための公的支出削減策や労働改革は、必要性のある政策であることも事実だ。2兆1000億ユーロ(約269兆8000億円)の公的債務残高を抱え、まず鉄道員の年金優遇を今後の新規採用から廃止するなど国鉄改革を進めた。

 片や、議会側の身を切る改革である上下両院の3割の定数削減案は、議会内の抵抗で成立が見えない。また、法人税を33・3%から2022年までに25%に引き下げる方針の一方、大衆の側に痛みを求め、自動車燃料税などを増税しようとした政権に「金持ち優遇」との批判があった。さらに、マクロン氏の「電気自動車を買えばいい」など燃料税増税断行の意思を示した際の発言も反発を強めた。

 結局、マクロン政権は発足当初の施政方針とは裏腹に、来年1月の自動車燃料税の増税を取り下げ、企業に負担をかけない最低賃金の引き上げなど公的支出を増やすことでデモ隊に譲歩した。市民革命の聖地であるフランスでは、不満をためていた労組の勢いがデモによって増し、早くも財政再建策は暗礁に乗り上げようとしている。

 ポピュリズムで当選した政治家が、大衆に迎合することなく改革を進めることには困難が伴い、むしろ国難を招く。

 情報操作への対策を

 このような状況の中で、ルドリアン外相は公安当局がフランスのデモに乗じたロシアのインターネットによる介入に警戒していることを地元ラジオに語った。ネットの普及で、選挙にも騒乱にも第三国が情報操作を行う動きに、しっかりとした情報発信や対策を行う重要性が高まっている。