トルコ新体制、国内外の安定に尽力を


 トルコで大統領選が行われ、エルドアン大統領が再選を決めた。今回の選挙後、大統領に実権が集中する制度に全面移行する。トルコは欧州、中東、アジアの接点という戦略的要衝に位置する。国内の安定を図り、シリア内戦の終結などに尽力する必要がある。

大統領が強力な権限握る

 エルドアン氏の得票率は52・5%で、同時に行われた総選挙(一院制、定数600)でも、エルドアン氏率いるイスラム系与党・公正発展党(AKP)が政党連合を組む極右・民族主義者行動党(MHP)と合わせて過半数を獲得した。

 エルドアン氏は2003年の首相就任後、大型公共事業の実施で雇用の創出と高い経済成長を実現させた。だが最近は、外国からの投資が鈍り、通貨リラが対ドルで急落してインフレを招いている。経済低迷で失業率が高止まりし、若者の不安が高まっている。

 また16年7月には、軍の一部勢力が政権転覆を狙ったクーデター未遂事件が発生。事件後に解雇された公務員や軍人は11万人、逮捕・拘束者は15万人を超える。

 トルコでは昨年4月に国民投票で承認された憲法改正で、今回の選挙後、議院内閣制から大統領が閣僚の任免権など強力な権限を握る大統領制に移る。大統領の任期は5年2期までで、エルドアン氏が28年まで在職する可能性もある。名実ともに国の最高権力を握ることになるが、国内の安定と繁栄を実現する必要がある。

 一方、エルドアン氏がシリア情勢などをめぐって、欧米との対立を深めていることは懸念材料だ。トルコがシリアで進めているクルド勢力に対する軍事作戦などによって米国との関係が悪化。米国とは、16年7月のクーデター未遂の首謀者とされる在米イスラム指導者ギュレン師の身柄引き渡し問題も火種となっている。05年に始まったトルコの欧州連合(EU)加盟交渉も進展が見られない。

 トルコはシリアのアサド政権の後ろ盾でもあるロシアとの対話を重視している。トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国でありながら、NATOと緊張関係にあるロシアの防衛システム導入計画を進めており、欧米が警戒するのは当然だ。

 アサド政権は反体制派に対して国際条約で禁止されている化学兵器を使用し、国際社会の強い批判を浴びた。ロシアはそのアサド政権を支援することで、中東への影響力を増大させようとしている。人権や国際ルールを無視し、自国の都合ばかりを考える姿勢が許されるはずはない。トルコにとって、欧米との対立を強め、ロシアに接近することが得策とは思えない。

安倍首相は改善求めよ

 一方、トルコは親日的な国であり、安倍晋三首相はエルドアン氏の再選を受けて「中東や国際社会において大きな役割を担うトルコと力を合わせ、地域や世界の平和と繁栄に共に貢献していくことを楽しみにしている」と呼び掛けた。

 安倍首相にはエルドアン氏との個人的な信頼関係を生かし、エルドアン氏と欧米との橋渡し役を務めてほしい。