スペインテロ、過激思想拡散に怯える欧州


容疑者ら仏国に潜伏か

 スペイン当局は、スペイン・バルセロナの繁華街で17日に起きた車で群衆に突っ込んだテロの容疑者が、フランスに逃げ込んだ可能性があるとの見方を示した。逃走している男は車を運転していたモロッコ系のユネス・アブーヤアクーブ容疑者で、スペイン・フランス両警察当局は国境付近の監視を強化し、行方を追っている。(パリ・安倍雅信)

大規模テロ準備も

 一方、フランス南部マルセイユ市内の2カ所のバス停に車が突っ込み、42歳の女性1人が死亡、45歳の女性1人が負傷し、病院に運ばれた。車を運転していた男は警察に身柄を拘束されたが、テロ事件かどうかは判明していない。

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スペインのバルセロナ繁華街のテロ事件現場に犠牲者の追悼に訪れ、献花する国王フェリペ6世とレティシア王妃(やや右)と市民ら=19日(UPI)

 スペイン当局は、バルセロナなどで起きた一連のテロで、実行犯の若者らを扇動したのは、イスラム教のイマーム(導師)でモロッコ人のアブデルバキ・エ・サティ容疑者(45)だとみている。同容疑者は、テロの前日、バルセロナから約200㌔離れたアルカナルで起きた民家が全壊する爆発で死亡したとみられている。

 アルカナルの民家では、120本のガスボンベや、過激派組織「イスラム国」(IS)がよく使用する爆薬の過酸化アセトン(TATP)の痕跡が見つかっている。当局は犯行グループが大規模な爆発テロを準備する最中、民家で爆発事故が起き、急遽(きゅうきょ)バルセロナの繁華街などで、車で群衆に突入するテロに切り換えたとの見方を強めている。

 さらに主犯格とみられるサティ容疑者は、過去に薬物絡みの罪で2012年まで4年間の服役経験があり、服役中に刑務所内で、2004年に191人が犠牲となったマドリード列車爆破テロを起こしたイスラム過激派メンバーと接触していた疑いが持たれている。サティ容疑者は刑務所内で聖戦思想に感化された可能性があるとみられている。

 今回のテロで死亡または逮捕されたテロ実行犯の若者の多くはバルセロナの北100㌔のリポル出身で、当地のモスクでイマームだったサティ容疑者によって、子供たちが聖戦思想に洗脳されたと口々に語っている。また、服役歴のある男がイマームになっていたことに「まったく理解できない」と怒りを表している。

 フィンランド南西部の都市トゥルクでも19日、2人が犠牲になる襲撃テロ事件が発生しており、容疑者がスペインのテロ容疑者と似た18歳のモロッコ人だった。そのため、ヨーロッパ各地で聖戦思想に感化された地元の移民系の若者を利用したテロが今後も起きる可能性が高いと指摘されている。