少女誘拐事件をでっち上げ


露メディア、ドイツで情報工作

 【ベルリン】ドイツ情報当局者らは、来月の連邦議会選を控え、相次ぐサイバー攻撃、情報漏洩(ろうえい)、ソーシャルメディアで拡散されるフェイクニュースに神経をとがらせている。しかし、かつてロシアのプーチン大統領が旧ソ連国家保安委員会(KGB)の工作員として活動した旧東独では、すでにロシア主導の妨害工作が進められているという。

 ロシア系ドイツ人が多く住む東ベルリン・マルツァーンヘラースドルフ区選出の市議会議員ドミトリ・ガイデル氏によると、ロシアは、ロシア系ドイツ人を扇動し、その存在を国際社会に知らしめることを目指しているという。

 ガイデル氏はワシントン・タイムズ紙に対し、「ロシア国営宣伝機関」が東ベルリンで実行した「フェイクニュース」の例を挙げて、ロシアによる巧妙な情報工作について警鐘を鳴らした。

 衛星放送RT、ウェブサイト「スプートニク・インターナショナル」、その他さまざまなロシア語ソーシャルメディアが2016年1月、3人のアラブ系イスラム教徒の男が、マルツァーンヘラースドルフの13歳のロシア系ドイツ人少女を誘拐し、レイプしたという情報を流し始めた。「リサ事件」と呼ばれている。

 その後、プーチン氏支持で知られる極右組織が現地で集会を組織し、被害者の少女の「にせの親族」(ガイデル氏)が現れ、事件の解明を訴えた。

 このニュースは1週間あまりたって、でっち上げだったことが明らかになるが、その間にロシア系ドイツ人数百人が国内の都市でデモを行っていたという。

 事件が起きたのはちょうど、地方選の選挙戦の真っ最中で、シリアなど中東から100万人以上の難民を引き受けるという前年のメルケル政権の決定が争点となっていた。

 ガイデル氏は、この事件で最も重要なのは、ロシアが容易に、ドイツ国内のロシア系住民を動員できることを示した点だと訴えた。

 北大西洋条約機構(NATO)は、リサ事件について、メルケル氏の信頼を失わせるための古典的な「にせ情報」工作と分析、「ロシアの外国メディアは、体制批判ジャーナリスト、にせ専門家、メディアと共謀」していると指摘した。

(ワシントン・タイムズ特約)