次期仏大統領、困難な船出に


「EU」に不満噴出、棄権や消極的支持も

 フランス大統領選第2回投票で国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン候補(48)に勝利したエマニュエル・マクロン(39)前経済相は、フランス史上最年少の大統領になるが、難題が待ち受けている。仏メディアだけでなく、英国営TV、BBCもマクロン氏の進む道は困難に満ちていると指摘した。

来月下院選で早くも試練

 最大の課題は、大統領選で表面化した国民を分断する対立をどう融和させるかだ。マクロン氏は66%強を得票したが、その中にはルペン氏当選阻止のために消去法で投票した有権者が含まれ、棄権者も400万人を超えた。

マクロン氏

7日、フランス大統領選で勝利し、パリのルーブル美術館前の広場で演説を終えたマクロン前経済相(AFP=時事)

 一方、ルペン氏は33%強の得票で、FN支持者以外を含む1000万人超の有権者が明確な意志で投票している。

 国民の3分の1は、欧州連合(EU)や通貨ユーロからの離脱、保護主義的政策を支持したことになる。棄権した有権者の中には、金融界出身のマクロン氏の超リベラルでグローバル化を肯定する考え方に強い嫌悪感を持つ人々が少なくない。マクロン氏は極右勢力だけでなく、過度の競争を嫌う左派勢力も敵に回すことになる。

 当面の最も重要な課題は6月の国民議会(下院)選挙で、マクロン氏が昨年8月に立ち上げた政治運動「前進」を政党にし、下院で過半数の議席を獲得できるかだ。主要大政党に属さない新大統領の足下で、大統領とは異なる政治勢力が多数派を占めた場合はねじれが生じ、思うような政権運営は難しくなる。

400

 さらに国民の最大の関心事である雇用問題では、10%に達する失業率を解決するため、就任後、最初の数カ月間に行政命令で労働法改革を断行すると公約している。週労働35時間制の緩和や雇用制度の規制緩和など、労組の激しい抵抗が予想され、前オランド政権が解決できなかった失業問題の解決が、マクロン氏の評価を左右するのは必至だ。

 テロ対策の強化では、現在、内務省が把握している危険性の高い人物は仏国内で1万人に達すると言われる。テロリストを生む土壌となっている移民・貧困層の若者による犯罪を抑え、教育や職業訓練を拡大することが課題となっている。

 マクロン氏は、選挙期間中、EUの重要性を訴えるとともに、英国が離脱する理由となったEU官僚機構の改革などに着手すると公約している。ただ、親EUのマクロン氏の当選は、メルケル独首相らEU首脳陣に歓迎されているが、改革は容易ではない。

(パリ安倍雅信)