仏大統領選 マクロン、ルペン氏決選へ


社会・共和の両候補敗北

 フランス大統領選の第1回投票が23日行われ、独立候補のエマニュエル・マクロン候補(39)と、右派・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン候補(48)が、5月7日の第2回投票に進むことが決まった。最大野党・共和党のフィヨン候補は3位、最大与党・社会党のアモン候補は5位となり、既成大政党両候補が敗北する結果となった。

マクロン

国民戦線のルペン党首=23日、エナンボモン(EPA=時事)

 マクロン候補は、昨年夏に仏経財相を辞任し、中道の政治運動「前進」を立ち上げた人物で選挙経験はなく、組織化された政党も持たない。一方、ルペン候補は過激発言で知られた父親が創設したFNの党首でナショナリズムを前面に出し、移民排撃などを主張し、両者ともに既存大政党の支えはない。

 選挙結果を受け、仏メディアは「前代未聞の結果」「第5共和制始まって以来の出来事」(仏国営TVフランス2)などと報じている。ただ、両者の政策は正反対でマクロン氏は自由貿易を維持し、フランスが欧州連合(EU)を盛り上げ、共に発展していくとしているのに対して、ルペン氏はEU離脱やユーロからの撤退、国境復活などを公約に掲げている。

ルペン

マクロン前経済相=23日、パリ(EPA=時事)

 第2回投票に対して、敗北宣言したフィヨン氏とアモン氏は、それぞれポピュリズム政党の大統領誕生阻止のため、マクロン候補への投票を呼び掛けている。フランスでは2002年の大統領選で父親のルペン候補が第1回投票で現職のジョスパン首相を下し、第2回投票に進んだが、娘のルペン候補は今回、父より100万票以上多く得票している。

 金融界出身のマクロン候補と極右出身のルペン候補に対して、4位につけた極左のメランション候補の支持者の中には、第2回投票では「金融(マクロン候補)と憎しみ(ルペン)の両候補に入れるわけにはいかないので白票を投じる」との声も聞かれる。

 主要5候補の得票率は内務省の開票率96%時点の集計で、マクロン氏23・9%、ルペン氏21・4%、フィヨン氏20%、メランション氏19・5%、アモン氏6・4%。決選ではマクロン氏優勢との見方がある一方、近年、FNは着実に政治基盤を拡大し影響力を強めている。そのため、EU統合で失業したり、工場を失ったり、農業で損失を被る有権者がルペン氏に投票する可能性は高く、予断を許さない状況だ。

(パリ安倍雅信)