英議会テロ、根絶に向け国際連携強化を


 ロンドン中心部の国会議事堂近くでテロ事件が発生し、議事堂を警備していた男性警官1人と通行人3人の計4人が死亡、約40人が重軽傷を負った。実行犯の男は射殺された。

 無辜(むこ)の人々を襲撃する卑劣なテロは決して許されない。

サウジ滞在中に過激化か

 現場は有名な時計塔「ビッグベン」に近く、観光客も多い一帯。男の運転する車は、議事堂前のテムズ川に架かるウェストミンスター橋の上で歩道に乗り上げて歩行者を次々とはねた。車はそのまま前進して議事堂横の鉄柵に衝突。車から降りた男は刃物を持ち、議事堂敷地内に入って警官を殺害した。

 欧州では、130人が犠牲となった2015年11月のパリ同時テロなど、これまでも多くのテロが起きた。今回のテロのちょうど1年前には、ベルギーの首都ブリュッセルで同時テロが発生し、32人が死亡した。

 今回と似通った手法のテロも生じている。昨年7月にはフランス南部ニースで花火の見物客にトラックが突っ込んで80人以上が犠牲となった。12月にもベルリンでクリスマス市場にトラックが突っ込み、12人が死亡している。入手が困難な銃や爆弾ではなく、簡単に手に入る車が凶器として使われているところに未然防止の難しさがある。

 これだけ多くの人がテロの犠牲となったことに、改めて強い怒りを覚える。どのような理由があったとしても、テロは言語道断の行為だ。

 安倍晋三首相は英国のメイ首相に電話し、今回の事件について「この困難な時に日本は英国国民と共にある」と伝えた。国際社会はテロの根絶に向けて連携し、情報共有を一層強化しなければならない。

 欧州のテロの多くはイスラム過激派によるものだ。今回の実行犯も、英語教師として滞在したサウジアラビアで何らかの影響を受け、過激化したとの見方が浮上している。数年前にイスラム過激主義との関連で情報局保安部(MI5)による捜査を受けたこともあった。

 今回は実行犯が自発的に行った「ローンウルフ(一匹おおかみ)」型テロとみられている。一方、車を暴走させる直前にテキストメッセージを送受信できる通信アプリを使用しており、犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)から指示を受けていた可能性もある。事件の関連で、一時11人が拘束された。事件を徹底解明し、テロ対策に生かすべきだ。

 英国では50人以上が死亡した05年7月のロンドン同時爆破テロ以来、テロ対策を強化してきた。街中に多数の監視カメラを設置したほか、情報機関の権限も拡大。13年6月以降、13件のテロ計画を阻止した。

 今回のテロは防げなかったものの、これまでの取り組みは決して無駄ではない。さらなる対策強化に努めてほしい。

ネット空間への対策も

 IS掃討作戦に参加する有志連合の閣僚会合が米国務省で開かれ、軍事作戦について話し合ったほか、ISが過激思想の拡散に利用しているネット空間への対策強化も確認した。テロ防止には、こうした取り組みも欠かせない。