国際社会はウクライナの新大統領支えよ


 旧ソ連のウクライナで行われた大統領選は即日開票の結果、大富豪で親欧米派のペトロ・ポロシェンコ最高会議議員が圧勝する見通しだ。対立する東部を中心とする親露派と、西部中心の親欧米派の融和を願う多くのウクライナ国民は、東西双方に接点を持つポロシェンコ氏を選んだ。

 国際社会はポロシェンコ氏を支援し、ウクライナの混乱に終止符を打つべきである。

 東西双方に接点持つ

 ソ連崩壊後にビジネスで頭角を現し、ウクライナ最大の菓子メーカーを作り上げ「チョコレート王」とも呼ばれるポロシェンコ氏は、2004年のオレンジ革命で政権に就いた親欧米派ユーシェンコ元大統領の側近中の側近であり、同政権で中銀総裁や外相などを歴任した。

 一方でポロシェンコ氏は、その経歴や手腕を買われ、10年に発足した親露派ヤヌコビッチ前政権で経済発展・貿易相に任命されている。

 ヤヌコビッチ前政権を崩壊させた親欧米派野党勢力の抗議デモは、治安部隊との衝突で、双方100人以上の死者を出すに至った。その後も流血の事態は続き、ロシアによるクリミア併合に刺激された東部のドネツク、ルガンスク両州の親露派武装勢力は住民投票を強行し、独立を宣言した。

 国家分裂の危機に直面するウクライナにとって、親欧米派でありながらも、親露派と強い繋(つな)がりを持つポロシェンコ氏は、東西住民の融和を図る上で極めて重要な位置にいる。

 ポロシェンコ氏は新大統領としてドネツク、ルガンスク両州を早期に訪問すると表明。ロシア語使用の保障のほか、地方の自治権拡大にも意欲を示した。武装解除した勢力には恩赦を与える方針だ。

 もっとも、親露派武装勢力はポロシェンコ氏との対話を拒否している。ドネツク、ルガンスク両州を合併した上で、中央政府との対決姿勢を強める構えだ。

 東部の親露派住民との対話を実現するためには、背後にいるロシアを動かす必要がある。ポロシェンコ氏は「ロシアは隣人であり、米国やEUの参加のもとでロシアと対話する」と語り、親欧米路線を取りながらも、ロシアとの対話を重視する姿勢を示した。また、「(ウクライナ)東部の状況に対応するための取り組みをロシアが支援することを望んでいる」とし、6月前半にもロシアの首脳と会談する考えを示した。

 もちろん、ロシアが代償なしにポロシェンコ氏に手を差し伸べるとは思えない。ロシアの狙いはクリミア併合の既成事実化であり、連邦制導入により親露派住民の自治権を拡大し、彼らを通じてウクライナに影響力を行使することである。

 許されない露の揺さぶり

 ウクライナの東西融和を実現するために、ロシアの力が必要なことは事実だ。しかし、ロシアがそこに付け込み、新政権を揺さぶることは許されない。また、武力による国境変更が既成事実となるような事態を認めるわけにはいかない。国際社会はウクライナの東西融和と地域の安定に向け、新大統領を全力で支援すべきである。

(5月27日付社説)