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台湾与党、LGBT票取り込みに躍起


 台湾の行政院(内閣)は先月21日、同性婚を合法化する法案を閣議決定し、立法院(国会)で成立すれば、5月までに施行される見通しだ。昨年11月、民法改正による同性婚容認に反対する住民投票が成立したが、蔡英文政権は同性2人に「婚姻関係」の戸籍登録を認め、財産も民法の夫婦間の規定を準用する踏み込んだ特別法案で乗り切りを図る。来年1月の総統選に向け、LGBT(性的少数者)票取り込みによる支持率回復に躍起になり、リベラル急旋回している蔡政権に対し、党内外で賛否が割れている。
(香港・深川耕治)

同性婚合法化へ特別法案
党内反対派は愚策と批判

 台湾の最新世論調査結果(2月22~24日、美麗島電子報)によると、総統選での支持率は柯文哲台北市長が37・2%でトップ、朱立倫元新北市長(25・9%)、蔡英文総統(16・8%)の順。もし、野党・国民党で韓国瑜高雄市長が出馬した場合、韓国瑜氏が36・6%でトップ、柯文哲氏(28・2%)、蔡英文氏(18・0%)でいずれも蔡総統は苦戦している。

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 蔡氏は来年1月の総統選で再選を目指して出馬を表明しているが、LGBT票で支持率回復を狙っているとすれば、政争の具ともなりかねない。

 台湾の司法院大法官会議(憲法裁判所に相当)は2017年5月24日、「同性婚を認めない現行民法は違憲」との憲法解釈を発表し、2年以内の立法措置を求めていた。しかし、昨年11月、民法改正による同性婚容認に反対する住民投票が成立し、蔡英文政権はタイムリミットである3カ月以内の対応を迫られ、民法改正ではなく、今回の特別法施行を目指す決定を下した。

 当初、台湾独立を目指す民進党支持者のコア層の一つであるキリスト教福音派などが、「男女間という結婚の前提を失えば、健全な家庭の概念自体が破壊され、崩壊する」として同性婚への猛烈な反対運動を展開していることから、党内保守派に配慮して結婚と同等の権利を保障する形式にとどめるとみられていた。

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台北のLGBTパレードで、同姓婚への支持を訴える参加者=昨年10月27日(時事)

 特別法案では、18歳以上の同性2人に「婚姻関係」の戸籍登録を認める。法案の名称は「司法院釈字第748号解釈施行法」と定められ、「同性婚」という表現を除き、賛成派や反対派への配慮をにじませた。

 蔡総統は16年の政権樹立前からLGBTへの差別撤廃、同性婚の合法化を選挙公約に掲げ、台湾独立派のコア層、特に家庭重視のキリスト教長老派とは真逆の支持層獲得を目指してリベラル路線を打ち出していた。

 民進党内部には、性に対する保守派と急進派が混在し、蔡政権は発足時に同性婚の合法化については双方に配慮する形で曖昧な態度を取るスタンスとなり、急進派からは「公約を守れ」「優柔不断」との失望が強まっていた。

 蔡総統は21日、「同性婚については2年以上の討議を重ね、台湾社会の最大公約数を得て解決する問題だ。不満があっても寛容と相互理解を希望する」と表明。同性婚に一貫して反対している下一代幸福連盟は「行政院の特別法案は昨年の住民投票結果による主流民意に逆行しており、デモ抗議も辞さない」と抗議している。

 今回はLGBTの権益団体から「LGBTを特別法の枠内に閉じ込めて権利保護が不十分だが、努力が見える」(婚姻平権大平台)と一定評価を受ける一方、保守派から「愚策で失望させられた」との批判が強まり、次期総統選の候補指名で党内保守派が蔡氏支持に回らない動きも出てきた。

 同性婚に消極的な国民党は「昨年の住民投票の結果を踏まえ、民法の解釈を安易に変えるわけにはいかない」とし、「総統選では同性婚支持、反対のそれぞれの声は一定の圧力となる。公聴会を開き、住民投票と特別法のバランスを取るべきだ」(国民党の陳学聖立法委員)と見ており、同性婚が総統選の勝敗を決する重要争点とは見ていない。