米朝首脳、あすから2回目の会談


「スモールディール」で合意か
トランプ政権 小出し戦術にはまる危険

 ベトナム・ハノイで27、28両日開催されるトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による2回目の米朝首脳会談は、非核化に向けて具体的に前進できるかが最大の焦点だ。だが、北朝鮮の核の脅威が大きく低減するような画期的な合意には至らず、北朝鮮が一部の核関連施設を廃棄する代わりに米国が相応の見返りを与えるという「スモールディール(取引)」にとどまるとの見方が支配的だ。

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5日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が到着予定のベトナム北部ランソン省ドンダン駅の前で、整列するベトナムの警官ら(AFP時事)

 米誌ナショナル・インタレスト(電子版)は、米朝首脳会談の見通しについて、アジア専門家76人の分析を掲載しているが、その3分の2以上が悲観的な結果を予想している。

 マイケル・グリーン元米国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長は、「中身が無いことを繰り返す」シナリオが最も可能性が高いと指摘。このシナリオでは、北朝鮮に引き続きミサイル発射や核実験などの挑発行為を控えさせることができるだろうが、「北の能力は拡大し続け、北を抑えるために必要な国際的な制裁網や軍事演習も崩れていく」と強い懸念を示した。

 トランプ氏の対話路線を積極的に支持する意見もあるが、気掛かりなのは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)など米国を直接攻撃できる能力さえ放棄させればいいという「ICBMディール」を求める主張が目立つことだ。

 例えば、ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン上級研究員は、北朝鮮が既に保有する核兵器を放棄させるのは困難だとして、「部分的な制裁解除と引き換えに、核兵器製造能力と長距離ミサイルを廃棄させるディールを目指すべきだ」と主張。グラハム・アリソン・ハーバード大教授も、北朝鮮にICBM廃棄を約束させることができれば、「歴史的業績になる」と論じている。

 日本を攻撃できる中距離弾道ミサイルの脅威は無くならない「ICBMディール」は、日本にとって最悪のシナリオだが、「米国第一主義」を掲げるトランプ氏だけにその懸念は拭えない。

 米朝首脳会談に向けた実務者協議では、寧辺核施設の廃棄が主要争点になっているとされる。ただ、仮に北朝鮮がこれに応じても、平壌郊外の「カンソン」にあるとされるウラン濃縮施設などその他の核関連施設は手付かずで、最終ゴールである「完全な非核化」は果てしなく遠い。実際、ワシントン・ポスト紙によると、トランプ政権高官も意義ある合意に至るかどうか懐疑的だという。

 外交成果を焦るトランプ氏が「ビッグディール」を狙って大幅な譲歩をするよりは、「スモールディール」を積み重ねていく方がベターかもしれない。だが、非核化と称する措置を小出しにして見返りを最大化する北朝鮮の「サラミ戦術」にトランプ政権もはまってしまうことが懸念される。

(ハノイ早川俊行)