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中国は「無神論者の独裁」


関係深めるバチカンも批判
香港の枢機卿に「トルーマン・レーガン自由賞」

 米非営利組織「共産主義犠牲者追悼財団」はこのほど、首都ワシントンの連邦議会で、自由と民主主義の促進に貢献し、共産主義に反対してきた個人や団体に贈られる「トルーマン・レーガン自由賞」をカトリック香港教区の元司教、陳日君枢機卿に授与した。最近の中国とバチカンの急接近を強く反対している陳枢機卿は、授賞式で、宗教弾圧を強める中国の脅威に改めて警鐘を鳴らした。

陳日君枢機卿

1月28日、米首都ワシントンの連邦議会で「トルーマン・レーガン自由賞」を受賞したカトリックの陳日君枢機卿(中央)=山崎洋介撮影

 天安門事件や中国による宗教弾圧を批判してきた陳枢機卿は、最近では、バチカンと中国政府が昨年9月、歴史的な「暫定合意」を結んだことに反対していることで注目されている。

 バチカンと中国は1951年に断交し、中国内の司教をどちらが任命するかで対立。中国国内にいる1000万人以上のカトリック教徒は、政府公認教会と、法王に忠誠を誓う非公認の「地下教会」に分かれている。

 暫定合意の詳細は公表されていない。しかし、中国では現在、地下教会の閉鎖や信徒の投獄、聖書を燃やすなどの弾圧が激しさを増している。こうした中、中国が合意を利用して、地下教会への弾圧を強めることが懸念され、陳枢機卿は、暫定合意を「真のカトリック殲滅(せんめつ)の第一歩」「信徒に対する裏切行為」などと厳しく批判している。今回の受賞も、「中国で信教の自由を侵害された人々の声を代弁し、司教任命問題でバチカンと中国共産党の共謀に反対した」との理由からだ。

 授賞式前に記者団の取材に応じた陳枢機卿は、ローマ法王が合意について「対話を通じて決めるが、(最終的に)任命するのは法王だ」と語ったことについて、「中国政府によって司教が選ばれるのであれば、それは政府の人であって、われわれの教会の人ではない。最終的に任命するのが法王だとしても、中国側が指名した人物を拒否するのは容易ではないだろう」と強い懸念を示した。

 授賞式で、陳枢機卿は「マルクス主義はもはや中国大陸に存在しないが、宗教を迫害する無神論者による独裁政権は残っている」とその残忍さを指摘。その迫害は、香港にも及んでいるとして、「1997年の香港返還時に約束された『高度な自治』は、ほとんど残っていない。香港は間もなく中国のただの一つの都市になるだろう」と悲観した。

 式典に出席した米共和党のクリス・スミス下院議員は、中国が習近平国家主席の下、新疆ウイグルのイスラム教徒、チベットの仏教徒、キリスト教徒、法輪功学習者が前例のない深刻な抑圧に苦しんでいると指摘。「世界は、習氏による宗教に対する残酷で攻撃的な抑圧に対して、もっと行動を起こさなければならない」と訴えた。

 同財団のリー・エドワーズ会長は、陳枢機卿が長年にわたり香港と中国本土の人々の人権や宗教の自由を擁護し続けてきたと評価し、「多くの人は彼を『香港の良心』と呼んでいる。そしてわれわれは彼を『中国の良心』と呼びたい」と称(たた)えた。

 勲章を授与された後、この日87歳になった陳枢機卿は賞を授与されたことを光栄に思うが、「この名誉は、自由や人権のために苦しんできた中国本土と香港のすべての英雄ためのものだ」と強調した。

(ワシントン山崎洋介)