インド太平洋戦略、強圧的な中国に対抗せよ


 ポンペオ米国務長官は8月1日から5日までの日程で東南アジア諸国を歴訪し、日米が進める「自由で開かれたインド太平洋戦略」を具体化するインフラや安全保障面での投資計画を発表した。

 南シナ海の軍事拠点化や、シルクロード経済圏構想「一帯一路」を進める中国を牽制(けんせい)する狙いだ。

米が安保協力で資金拠出

 ポンペオ氏はシンガポールで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)の会合で、南シナ海などの安全保障分野への協力へ3億㌦(約333億円)を拠出する方針を発表した。南シナ海で勢力を拡大する中国を念頭に、海洋安保の強化や人道支援、平和構築、国境を越えた犯罪対策に充ててASEAN各国を側面支援する。

 中国による南シナ海の軍事拠点化は国際法違反であり、他国の貿易のための自由航行に危険を及ぼして地域の安定を揺るがす。米国は地域での影響力維持に向けた取り組みを加速させなければならない。

 ポンぺオ氏は中国に「法の支配」の重要性を繰り返し強調。ASEANと一体となって中国の脅威に対抗する立場を表明した。中国の王毅外相との会談で南シナ海軍事拠点化への懸念を直接伝えたのは当然のことだ。

 一方、ポンペオ氏は歴訪の直前、インド太平洋地域のインフラ整備などを支援するためのファンド設立を発表し、サイバーセキュリティーやエネルギーなどの分野で、まず1億1300万㌦(約125億円)を拠出する方針を明らかにした。

 これを踏まえ、ポンペオ氏は、河野太郎外相、オーストラリアのビショップ外相との閣僚級戦略対話で、日米豪が協力してインフラ整備に取り組むことで一致した。

 一帯一路の一環として、中国はパキスタンやスリランカなどインド洋沿岸国で道路や港湾などのインフラ整備を進め、海洋進出の拠点としている。だが、スリランカで建設されたハンバントタ港は、建設費の大半を中国からの融資で賄ったものの、運用が低調で債務返済のめどが立たないため、スリランカは昨年、11億㌦で99年間貸し出す契約を中国国営企業と結んだ。

 ポンペオ氏は「米国が目指すのは協力関係であり、支配ではない」と強調した。領土問題や債務取り立てなどで強圧的な中国に対抗する必要がある。

 「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、インド洋と太平洋に面したアジアとアフリカを結ぶ地域の経済成長と安定を目指す構想だ。戦略を展開するには、この地域に航行の自由や法の支配といった価値観を浸透させることが求められる。

 米国は5月、太平洋軍を「インド太平洋軍」に改称した。これも「自由で開かれたインド太平洋戦略」に沿った措置で、マティス米国防長官は太平洋とインド洋の連結性が高まっていると強調した。軍備の増強などによってプレゼンスを強化することが不可欠だ。

安定や成長の後押しを

 日本は米国のほか豪州やインドとも協力し、インド太平洋地域の安定や成長を後押しする必要がある。