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習氏任期撤廃、さらに弱者を犠牲にするのか


 中国の習近平政権は「2期10年」と憲法が定める国家主席の任期について規定削除を求め、5日から始まる全国人民代表大会での採択が確実視される。

 改正されれば、2013年就任の習国家主席は、2期目の任期が満了する23年で3選が可能となり、党総書記の任期規定はないことから長期独裁政権への道が開かれる。

 長期独裁政権に舵を切る

 中国の近代化を牽引(けんいん)した鄧小平氏は、1人の人間にあらゆる権力が集中したことが「大躍進」や「文革」という悲惨な歴史をもたらしたことを反省し、「個人崇拝」を否定。党内に「集団指導体制」を持ち込むとともに、主要ポストに最大2期10年の任期制を導入した。

 習氏は、そうした集団指導体制から強権を保持した長期独裁政権へ舵(かじ)を切ろうとしている。中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は「党と国家の指導体制を完全にするものだ」と主張し、習氏続投を正当化した。

 独裁政権の本質とは暴力と嘘(うそ)だ。中国には未(いま)だに国軍も公共メディアもない。あるのは人民解放軍という中国共産党の軍隊と、党の宣伝媒体としてのプロパガンダ・マシーンだけだ。

 独裁政権の最大の問題点は、弱者の声が政策決定過程に反映されないことでもある。習政権の第1期の5年間で、政治改革が先送りされ、社会矛盾を拡大させた過ちは大きい。

 中国の経済発展は弱者の犠牲の上に成り立っている。弱者とは社会の底辺に押し込められたままの8億人の農村戸籍者だ。また、焼身自殺やテロが多発するチベットや新疆ウイグル自治区の少数民族は最大の弱者で、その反抗は今後過激化していくだろう。中国では人民解放軍より、治安維持を担当する公安の予算の方が多い。

 対外拡張路線を強化すれば周辺国との摩擦も増える。なりふり構わず海外に出ていく今の姿は、19世紀の欧米列強と重なる。中国は100年も遅れてきた帝国主義国家になろうとしているかのようだ。しかし、ただ強いというだけで世界に君臨するのであれば、世界は弱肉強食のジャングルになってしまう。

 中国には言論の自由も司法の独立もない。民主主義国家とは程遠い強権体質を強めるばかりで、グローバルリーダーになる条件が満たされていない。中国が目指すのは、世界一の経済大国にのし上がり、建国100年を迎える49年までに世界の覇権国となることだ。

 中国の覇権国への道は、次の三つの段階を経ることになる。①台湾奪回と南シナ海の完全支配②アジア覇権の確立③米を追い落としパックス・シニカ確立――。中国と欧州を海と陸で結び、ユーラシア経済圏をつくろうという習氏が打ち出した「一帯一路」構想も、世界覇権を握る戦略でしかない。

 覇権拡大に協力するな

 わが国に問われているのは、一帯一路へのバスに乗り遅れるかどうかではなく、中国が影響力を強めようとするインド太平洋地域で、中国が軽んじる航行の自由や法の支配などの価値観を浸透させられるかだ。中国の覇権拡大に協力するようなことがあってはならない。