軍事支援凍結で中露が接近


パキスタン内相が警告

 パキスタンのイクバル内相はワシントン・タイムズとのインタビューで、米国がテロ対策への不満から、パキスタンへの軍事支援を凍結したことによって地域が一層不安定化する可能性があるとした上で、このままではロシア、中国との関係を強化せざるを得なくなると警告、米国と軍事に限らない経済などでの協力の必要性を訴えた。

 両国関係は1月に急速に悪化した。トランプ大統領が、アフガニスタンで活動するテロ組織の隠れ家になっているとパキスタンを非難、少なくとも9億ドルの軍事支援を凍結したためだ。

 イクバル氏は、米国の主張を否定した上で、パキスタンで中国の影響力が強まっていることを指摘。米国との関係悪化が続けば、ロシア、中国からの兵器購入の可能性もあることを明らかにした。

 カーン国防相は1月、英紙フィナンシャル・タイムズで、米国の支援凍結を受けて「ロシア、中国との関係改善へと方針を修正した」ことを表明、中露への軍事での依存を強める意向を明らかにした。

 イクバル氏は、中国がパキスタンへの「改革的」投資を推進していることを強調した。その中でも特に、中国のカシュガルからパキスタンのグワダル港を結ぶ「中国・パキスタン経済回廊」プロジェクトがよく知られている。計画・開発・改革相を兼任するイクバル氏は、「(このプロジェクトの)経済インフラだけで460億ドルの投資を中国が約束している」と述べた。

 イクバル氏は、まず、オバマ政権時代に築かれた安全保障などでの「組織化された対話」がこの1年以上の間、停止しており、まず対話の復活を最優先すべきだと主張した。また、「パキスタンが現在苦境にあるのはわれわれのせいでなく、1980年代のソ連と米国との(アフガンでの)戦争の遺産であることを米国は忘れている」と指摘、この戦争で300万人以上の難民がパキスタンに流入し、「今もパキスタンに住んでいる」と窮状を訴えた。

 その上でイクバル氏は、米国との経済関係の強化に期待を表明。「米国経済の本当の原動力は、兵器ではなく、大学にある。パキスタンはその恩恵を受けていない」と経済力の強化へ、教育面での米国との協力強化を訴えた。

 パキスタンは、今後10年間で米国の大学で1万人のパキスタン人に博士号を取得させることを目指す「米・パキスタン教養回廊」プロジェクトを立ち上げている。イクバル氏は、米国にとっても「米国で教育を受けた優秀な人材と協力して、自由と民主主義の価値」を強化する絶好の機会となるはずだと指摘した。

(ワシントン・タイムズ特約)