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仲裁裁判決1年、中国の海洋進出に圧力強化を


 オランダ・ハーグの仲裁裁判所が、南シナ海に関して中国が主張する権利は認められないという裁定を下してから、きょうで1年を迎えた。中国の実効支配を「国際法違反」と結論付けた判決だ。

 本来であれば、中国政府はこれを真摯(しんし)に受け止めなければならないはずだ。しかし1年経過しても、南シナ海の軍事拠点化は留まるところを知らない。習近平政権への国際的な圧力こそ急務である。

 人工島の軍事拠点化進む

 仲裁裁判決は、南シナ海における中国の海洋進出をめぐってフィリピンが今から4年前に提訴した裁判の結果だ。中国が主張する南シナ海のほぼ全域にわたる管轄権について「中国が歴史的な権利を主張する法的な根拠はない」と判断した。

 また中国が造成する人工島に関し、排他的経済水域(EEZ)は生じないとした。中国当局の警戒行動はフィリピン漁船と衝突するリスクを生じさせたほか、人工島などの建設活動でサンゴ礁に回復不能な損傷を与えたと指摘した。

 しかし、習政権はこの判決について「紙くず」だと切り捨てている。国際法を無視して覇権拡大を進める姿勢は身勝手極まりない。

 南シナ海は年間5兆㌦相当の物資が通過する海域であり、天然資源も豊富だ。日本にとっては死活的に重要なシーレーン(海上交通路)でもある。中国による「内海化」は地域の不安定化にもつながりかねず、大国としての責任を放棄していると言わざるを得ない。

 人工島は滑走路を備えて戦闘機や爆撃機を運用できるばかりでなく、対空ミサイルなどを装備して基地としての防空能力も高いとされる。さらに、米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)は、人工島にミサイルを格納するシェルターなど新たな軍事施設が建設されたことを最近の衛星画像を公開して明らかにした。習主席がかつて非軍事化を約束したにもかかわらず、軍事拠点化はほぼ完成している。

 米海軍は今月初め、南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島のトリトン(中国名・中建)島から12カイリ(約22㌔)内に米艦を進入させる「航行の自由作戦」を実施した。中国の北朝鮮問題への取り組みは成果が上がっていないと判断したトランプ米政権が、対中圧力強化の一環として行ったものだ。

 だが北朝鮮の核・ミサイル開発の有無にかかわらず、中国の振る舞いは許されない。トランプ政権は南シナ海での航行の自由作戦をまだ2回しか行っていない。北朝鮮問題で中国の協力を引き出すため、南シナ海問題で譲歩するようなことがあってはならない。

 中国の行動は、長期的にはいかなる国家も軍事的手段を用いて自らに好ましい状況をつくれるという強い確信を持たせることに通じる。こうした無法は看過できない。

 航行の自由作戦継続を

 トランプ政権は国際法の下、今後も定期的に航行の自由作戦を続けるべきだ。中国が仲裁裁判決を無視し、国際秩序を揺るがすことは認められない。

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