航行の自由作戦、「中国の海」にしてはならない


 米上院外交委員会の上院議員が、南シナ海で「航行の自由作戦」が行われていないことに超党派で「懸念」を表明した。

 中国は習近平国家主席の下、米軍の展開を阻む「接近阻止・領域拒否」戦略を進めるなど米国に対抗し得る「海洋強国」の実現を目指している。南シナ海では次々と岩礁を埋め立てて飛行場を建設し、ミサイルまで配備した。南シナ海を「中国の海」にしないため、米軍は航行の自由作戦を継続する必要がある。

 トランプ政権は未実施

 米海軍は昨年10月、南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島にあるウッディー(中国名・永興)島の近くにミサイル駆逐艦1隻を通過させて以降、航行の自由作戦を実施していない。オバマ前米政権はこの作戦を4回遂行した。

 オランダ・ハーグの仲裁裁判所も昨年7月、南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で中国が造成する人工島に関し、排他的経済水域(EEZ)は生じないと判断したが、中国は無視している。一方、トランプ米政権は今年2月、原子力空母カール・ビンソンを南シナ海に派遣したが、航行の自由作戦は行っていない。

 こうした事態を懸念し、上院外交委のコーカー委員長(共和)やカーディン筆頭理事(民主)ら超党派の上院議員7人はトランプ大統領への書簡で、航行の自由作戦が「米国の安全保障とアジア太平洋地域の平和と繁栄に極めて重要だ」と強調。米政権が作戦実施に向けて必要な措置を講じるよう要請した。

 トランプ政権としては、核・ミサイル開発を進め、挑発を繰り返す北朝鮮への圧力を強めるため、中国に配慮している面もあろう。

 だが北朝鮮情勢を理由に、中国による南シナ海の軍事拠点化が許されるわけではない。

 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が昨年1月に公表した報告書「アジア太平洋・リバランス 2025」は、2030年までに中国軍が数隻の空母機動部隊を保有する可能性が高いと指摘。「南シナ海が事実上、中国の湖になる」と分析した。こうした懸念は現在、一層強まっている。

 CSISは今年3月、最近の衛星写真に基づき、中国が南沙諸島に造成した三つの人工島で、大型格納庫やレーダー施設をほぼ完成させ、いつでも作戦機や地対空ミサイルを配備できる状態にあるとする分析を発表。中国が今後、南シナ海のほぼ全域で軍用機と早期警戒レーダー網を運用できるようになると警告した。西沙諸島では、すでにミサイルを配備済みだ。

 経済発展を遂げた中国は軍事力を背景に、国際法上の根拠に欠けた海洋権益主張を繰り返している。中国は本来、大国として地域の平和と安定に尽力する立場だ。国際ルールを無視して情勢を不安定化させることは容認できない。

 米は黙認しない姿勢示せ

 トランプ政権は人工島から12カイリ以内の海域に軍艦を送り込む作戦の実施で、中国の覇権主義的な動きを黙認しないという姿勢を示し続ける必要がある。南シナ海が「中国の海」になる危険を除去しなければならない。